小児がんと誘発二次発がん

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小児がんについて書こうと思います。

 生まれたときから15歳まで(一般的に小児期)に見られる悪性腫瘍の総称は、小児がんと呼ばれています。日本では年間約2500人が小児がんと診断されている。現在、小児がんは、手術治療、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療、造血幹細胞移植などを組み合わせて治療されます。
 小児がんは発見が難しく、がんの増殖も速いですが、成人のがんに比べて化学療法や放射線療法に対する効果が極めて高いのも特徴でです。小児がんは以前『不治の病』とされてきましたが、1950年代にはそれまでの手術療法に加えて放射線治療が、1960年代には化学療法(抗がん剤)が治療に効果があることがわかり、その後、多剤併用や増血幹細胞移植が適用されるようになって、総合的に治癒率が向上し、現在では70~80%が治るようになってきました。しかし、成長途中であるので、晩期有害事象には注意が必要です。また、数が少なく種類が多いため、症例の多い病院での治療が必要です。
 小児がんにおいて最も多いのが白血病(40%)、次に多いのが脳腫瘍(20%)である。そして、神経芽腫、悪性リンパ腫、腎芽腫(ウィルムス腫瘍)などもあります。脳腫瘍においては神経膠腫(グリオーマ)、胚細胞腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫などが見られます。
 小児の放射線治療では発達障害を防止するため、椎体に均等に照射する方法が利用されています。

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次は二次発がんについてです。

 二次発がんとは抗がん剤や放射線治療において別の癌が二次的に発生することです。二次がん発症率は軟部肉腫で約26%、白血病で約16%、大腸がんで約12%となっています。他に皮膚がん、膀胱がん、食道がん、肺がん、骨肉腫などのがんが挙げられます。
 二次発がんの発生頻度としては、放射線治療を受けた患者の内100人に1人程度といわれており、特に小児がんの経験者に多いといわれています。子どもはがんを克服した後、何十年も生きることになるため、その分晩期障害が現れる可能性が高くなるからです。例えば小児がんで放射線療法を受けた場合、肉腫や皮膚がんのほか、首に照射を受けた人では甲状腺がん、また胸部に照射を受けた女児であれば将来的に乳がんを発症するリスクも高まります。したがって、小児がんを克服した人は、なるべくがんにかかりにくい生活を送ることが何よりも大切となります。例えば、喫煙や過度の飲酒、また皮膚がんの原因となる長時間の日焼けなどを避け、バランスのいい食事と適度な運動を心がけることが、二次発がんの予防につながるといわれています。
 癌治療を終えても油断しないことが大切だと思います。あと医療従事者は治療の際に、可能な限り二次発がんを抑えることが大切だと思います。

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放射線計測

放射線計測について書いていきます。

 放射線防護の目的において使用されている放射線測定器(サーベイメータなど)は初回の校正時(購入時)後は、使用者の求めに応じて、計量法に基づく事業所などにおいて校正(国家標準につながるトレーサビリティ体系)を行います。しかしながら、校正にかかる費用、日数などの関係で長期間校正されずに使用されている現状があるとして、これらの測定機による測定の信頼性を確保するため、JIS Z 4511が平成17年3月20日に改正され、新たに「確認校正」が追加されました。確認校正とは、放射線測定器の性能が校正後も維持され、校正定数が継続して使用できるか否かを判定するための校正法です。

次に主な計測器についてです。

まずは電離箱式サーベイメータについてです。

 電離箱内にγ線が入射すると、内部の空気が陽イオンと陰イオンに電離されます。これらのイオンが電極に移動すると10-9~10-14A程度の微電流が発生します。微電流を直流増幅して測定します。

次はシンチレーション式サーベイメータについてです。

 シンチレータにγ線が入射すると蛍光を発します。蛍光が光電子増倍管の光電陰極に当たると光電子が飛び出し、これが多数の大ノード(二次電子増倍電極)で増幅されて、大きな電気信号が得られます。このパルス電流を計数して放射線を計測します。

GM計数管式サーベイメータについてです。
 GM計数管にβ線が入射すると、内部のガスを電離させます(ガンマ線が入射すると、壁材と作用して内部に電子を放出させ、電子は内部のガスに電離を引き起こします)。電離によって生じたイオンがきっかけとなって管内に「電子なだれ」が生じ、電離が陽曲全体に広がって大きな増幅率をもつため、大きな波高のパルスが得られます。計数(線量当量率)が高くなると「数え落とし」や「窒息現象」を起こすので、注意が必要となります。

液体シンチレーションカウンタの概要についてです。

 低エネルギーβ線放出核種やα線放出核種は、その「飛程」が短いので液体シンチレーション測定法が適しています。その特徴は、試料自体の自己吸収がない、空気層や検出器窓による吸収がない、シンチレータで包囲されているので4π測定が可能などです。一方で試料、添加物、不純物などによるクエンチングを生じ計数効率が悪くなる、調製によってはケミカルルミネッセンスが生じ測定の障害が出るなどの短所もあります。
 これらの特徴を踏まえたうえで、トレーサ実験、環境中の3H測定、14Cを用いた年代測定、環境中(水中)のラドン濃度測定など多くの分野に利用されています。
 一般的に汎用性の高いシンチレータとして乳化シンチレータが使用されています。特徴として溶媒に界面活性剤が添加され、水溶性のサンプルを溶媒中に保持することができます。また、水溶性サンプル及び非水溶性サンプルどちらでも測定可能です。

 液体シンチレーションカウンタの測定原理についてです。
 シンチレータの主成分は有機溶媒であり、シンチレータの効率決定の重要な役割を果たします。効率の良い溶媒には

① エネルギー伝達効率が高い
② 溶質及びサンプルが溶解しやすい
③ 溶質の発光光子に対して化学的に透明
などの性質が求められます。
ベンゼンやトルエン、キシレンなどが用いられています。

 また、溶質として放射線のエネルギーを光に変える蛍光体があります。第1蛍光体は放射線のエネルギーを効率よく光に変え、第2蛍光体は光電子増倍管(PMT)の際好感度に変換する役目を持ちます。これらの溶質には

① 蛍光量子効率が高い
② 蛍光の減衰時間が短い
③ 溶解度が高い
などの性質が求められます。
 第1溶質にはTPやPPO、ナフタレンなどが用いられ、第2溶質にはPOPOPやbis-MSBなどが用いられます。そして放射線励起による液体シンチレーションの発光過程は、放射線エネルギー吸収による溶媒分子の励起、溶媒分子間のエネルギーの移行、励起分子から溶質分子へのエネルギーの移行、溶質分子からの発光によります。液体シンチレータに求められる性質として

① 高引火点
② 高含水率
③ 高計数効率
④ 低蒸気圧
⑤ 低毒性と低刺激性
⑥ クエンチング抑制力
⑦ プラスチックの無透過性
⑧ ケミカルルミネッセンス抑制力
などが挙げられます。

上顎癌と喉頭癌

まずは上顎癌についてです。

 上顎癌はOhngren’s line(内眼角と下顎角を結ぶ線)より上方の病変は眼窩、頭蓋底、側頭下窩、咬筋などの浸潤に伴って発症し、T4症例となって発見されることが多く手術も困難で残存が多いです。Ohngren’s lineより下方への病変は歯槽、口蓋への浸潤に伴い発見されることが多く、T2症例が多く、十分な切除が可能です。リンパ流はさほど豊富ではなく、リンパ節転移例は初診時で10%程度であり、局所制御が重要です。手術・5-FU(抗癌剤)動注・放射線治療の3者併用療法が基本となります。
 放射線の照射方法は患側横方向と前方一門の2門直交照射で楔型フィルターを使用するのが基本です。患側眼球が病変の浸潤によって遮蔽できない場合は、反対側の眼球の保護に留意し、涙腺も可能な限り遮蔽する必要があります。
 5年生存率は全体で30~50%、T1・T2は60%程度であるのに対しT4では20%程度となります。
 
 咽頭・喉頭構造図が放射線技師国家試験や医学物理士試験の医学の問題などによく出ているので、受験する方はそれぞれ上・中・下咽頭には何があるのかをしっかり覚えておいたほうがいいと思います。

次は喉頭癌についてです。

 喉頭癌はつんくさんも苦しんだ病気としても知られています。
 喉頭癌には部位によって声門癌、声門上部癌、声門下部癌があり、それぞれ治療方針が異なります。声門癌は60~70%、声門上部癌は30~40%で声門下部癌は少ないです。声門癌は嗄声により早期に発見されることが多く、リンパ節転移も少ないため(0~20%程度)、限局した照射野による放射線治療で根治可能です。声門上部癌は発見時に進行してることが多く、リンパ節転移も多い(40~70%)ため、広い照射野が用いられます。
治療についてです。
 声門癌はT1T2では放射線治療が第一選択となります。4MVX線を用い、ウェッジフィルタを使用してT1で66Gy、T2で70Gy照射される。T3で軌道が確保された状態では照射の後再発時に手術を行います。T3で軌道閉塞時やT4では手術が選ばれます。また進行例で、リンパ節転移陽性例では喉頭摘出後に頸部リンパ節郭清を行います。陰性例では喉頭摘出のみ行い、術後照射時にリンパ節を含めた頸部郭清を行います。照射前化学療法の併用で喉頭全摘と同等の効果が得られます。
 声門上癌でT1T2でリンパ節陰性例でも頸部リンパ節を含む照射野とします。進行例では喉頭全摘+頸部郭清か、原発巣については放射線治療を先行させ、効果が悪い例では喉頭全摘を行います。

治療成績です。
 声門癌の放射線治療による5年生存率はI期で85~90%、Ⅱ期で70~75%、Ⅲ期で40~60%程度です。
 声門上部癌の放射線治療による5年生存率はI期で60~80%、Ⅱ、Ⅲ期で40~60%程度です。

喉頭について以下に示します。

放射線防護体系

放射線が利用されるときには防護体系に従って行われます。

 防護の目的に沿って、放射線被ばくを伴う新たな行為とすでに導入している行為を変更する場合に対してどのような放射線防護の方策を講じなければならないか示した体系が、放射線防護体系です。
その具体的方策が(1)行為の正当化、(2)防護の最適化、(3)個人の線量限度です。

(1)行為の正当化
 放射線被ばくを伴う行為は正味の便益があることが確実な場合以外に導入してはならないです。行為の導入で最初に行うのが「行為の正当化」です。例えば放射線治療の場合、放射線治療の利益(癌の治癒)が有益な影響(被ばく)を上回るのが確実でなくてはならないというものです。また、放射線診断(一般撮影やCT、核医学検査など)の場合、放射線診断の利益(病気の診断)が有益な影響(被ばく)を上回るのが確実でなくてはならないというものです。

(2)防護の最適化
 行為の正当化で導入が決まった後に図られる方策です。すなわち、線源からの被ばくによる放射線影響をできる限り少なくするために、被ばく線量、被ばくする人数、被ばくの機会を社会的・経済的要因を考慮して合理的(ALARAと呼びます)に達成できるように低くすることです。ただし、ALARAはできるだけ被ばく線量は低く抑えようと努力する一方で、低い被ばく線量をさらに最小化しようという努力が、その効果に対して不釣り合いに大きな費用や制約、犠牲を伴う場合には、よしとしないという意味を持ちます。

(3)個人の線量限度
 個人の線量限度とは、作業者の場合は作業環境中に、一般公衆の場合は一般環境中にあるすべての行為又は放射線から、個人が受ける線量の上限値のことです。

自然放射線についてです。

 皆さんは自然界(土壌、水中、空気中など)に存在する放射性物質からの放射線や、2次放射線を絶えず受けるとともに、体内の放射性物質による体内被ばくを受けています。UNSCEAR1988年報告によると、通常のバックグラウンド地域での自然放射線源による実効線量への寄与は東京で0.65mSvといわれています。
 自然放射線による被ばくは、地殻中に存在する放射性物質の量、高度差等によりかなりの差があります。屋外における年間の体外被ばくは東京で0.65mSv、大阪で0.95mSvです。イランのラムサーでは400mSv、ブラジルのボソス・デ・カルダスで250mSvに達する地域もあります。1人当たりの自然放射線は日本平均で1.48mSv、世界平均で2.4mSvといわれています。

咽頭癌

咽頭癌は部位によって上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌に分かれます。

上咽頭癌についてです。

 上咽頭癌では初診時に70%の割合で頸部リンパ節転移が見られます。上頸部後方のリンパ節が見られるのが特徴です。上咽頭癌は頭蓋底と
parapharyngeal space への進展を有するため、手術的に切除することが困難で、治療は放射線が中心となります。これに化学療法が併用されます。扁平上皮癌が約90%でシスプラチンが有効とされています。
 T1~4、N0~3、M0の全ての癌が根治的放射線治療の対象となります。T3~4の進行例で放射線治療と同時併用化学療法で生存率の改善が得られるという報告が多く、一般的となっています。リンパ節転移を想定した大照射野で45Gy程度を照射後、原発巣に追加照射を行います。最近では強度変調放射線治療(IMRT)を用いて、唾液腺などの線量を減らす試みがなされています。

中咽頭癌についてです。

 中咽頭は気道と食道の交差点で”かぜ症候群”の首座です。東南アジアに多く、口腔内の衛生と関係があります。男性に多いです。早期例は放射線治療が主体で、進行例や放射線抵抗例では手術を行います。
 T1~T2、N0では放射線治療が優先されます。左右対向2門で開始し、40~45Gyの段階で治療計画を行い脊髄線量を抑え、総量70Gyを投与します。T3以上の進行例は放射線感受性の悪い例では40~45Gyの段階で手術を行います。リンパ節転移には頸部郭清を行います。
 治療成績は全体の5年生存率で40~60%程度です。

下咽頭癌についてです。

 早期には症状が発現しにくく、過半数がT3~4でありリンパ節転移例も6割以上と頭頚部腫瘍の中で最も予後が悪いです。手術とh放射線治療を組み合わせて治療を行います。化学療法の同時併用による有意が明らかになりつつあり、進行例では検討に値します。部位としては梨状窩、輪状軟骨後部、下咽頭後壁があります。
(1)梨状窩
 T1,2の早期例では放射線治療単独、手術が行われ、同程度の成績です。T3,4では手術が行われ、切除不能例では放射線治療と化学療法がおこなわれます。
(2)輪状軟骨後部
 切除可能例では切除と術後照射、切除不能例では放射線治療と化学療法が行われます。
(3)下咽頭後壁
 T1では放射線治療単独、T2~4では切除と術後照射が行われます。
 全体の治癒率は35%程度で局所病変で60~80%程度です。リンパ節転移をきたした例では20~40%、遠隔転移で10~20%程度の5年生存率です。放射線単独での成績はこれより劣ります。

以下に咽頭、喉頭の分類を示します。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分かれます。
これらについて説明していこうと思います。

まずはホジキンリンパ腫についてです。

 欧米ではホジキンリンパ腫は悪性リンパ腫の約半数を占めるが、日本では15~20%にすぎません。20歳前後と50歳以上に好発年齢の二峰性ピークがあり、男性にやや多いです。頸部リンパ節の無痛性の腫脹で発症することが多いです。特徴的な点は、隣接するリンパ領域に連続して順に進展することです。臨床病期の決定には、骨髄生検、血液検査(LDH、赤沈など)、単純X線写真、CT、超音波検査などが必要です。組織学的には5つに分けられ、予後が相違します。臨床病期はAnn Arbor分類が広く用いられています。
 治療法です。
 Ⅰ、Ⅱ期ではABVDなどの化学療法後に限局照射による放射線治療を行います。
 ⅢA期では主に化学療法単独で80%の10年無病生存率が得られます。
 ⅢB期、Ⅳ期はABVDによる化学療法が一般的です。
 ⅠA~ⅢB期で縦隔に巨大腫瘤を有する症例やⅢ期以上では化学療法とinvolved fieldの放射線治療が必要です。また、1個のリンパ節腫大とそれに連続する骨病変などの限局した節外病変を持つ症例ではしばしば、放射線治療単独で制御可能です。
 全体で5年生存率は90%、非再燃生存率は80%です。Ⅰ、Ⅱ期ではそれぞれ90~95%、80~85%、Ⅲ、Ⅳで60~85%、40~60%程度となっています。

次に非ホジキンリンパ腫についてです。

 非ホジキンリンパ腫では組織型、病期、リスクファクターを明らかにし、根治治療、対症療法、経過観察のいずれかを選択します。放射線治療と化学療法が主体で、腫瘍内科医と放射線治療医などが協議して治療を行います。最近ではWorking Formulationに代わり、REAL分類が多く用いられています。しかし、REAL分類は臨床側からの視点に欠けるため、悪性度や予後に関する検討がなく欧米症例が中心で、B-cell diffuse large cell typeが約過半数を占める日本では再分類が必要と考えられます。
 軽悪性群のⅠ~Ⅱ期では放射線単独で5年生存率は80~100%です。広い照射野は不要で線量は30~35Gyです。予後は良いが治癒には至らないので保存的な考え方が必要です。
 軽悪性群のⅢ~Ⅳ期では病期が進行しても長期生存が可能です。経過観察から骨髄移植まで種々の治療法がとられるが、長期予後には大きく関与しません。放射線治療も行われますが、対症療法となることが多いです。
 中、高悪性群のⅠ~Ⅱ期で大きな腫瘤がない場合はCHOPまたはリツキサン+CHOP(RCHOP)3コース後30~40Gyの放射線治療を行います。大きな腫瘤があったり、予後不良であったりする場合はCHOPの回数を増やします
 中、高悪性群のⅢ~Ⅳ期はCHOPによる化学療法が中心となり、化学療法の再発例では治癒は難しく、末梢血管細胞移植による大量線量法も考慮します。

脳腫瘍と口腔・口唇癌

まずは脳腫瘍についてです。

 脳腫瘍の病理的分類は多岐にわたるため、手術により組織診断を確定し、術後照射の照射範囲と線量を決定します。小児や決定臓器が隣接する場合には、放射線障害に留意する必要があります。
 神経組織は神経細胞(ニューロン)と神経膠細胞(ニューログリア)からなります。脳実質から発生する腫瘍は、神経膠腫と神経細胞起源の腫瘍で、基本的に悪性腫瘍の性質をもったものです。脳実質以外から発生するその他の腫瘍(神経鞘腫、下垂体線種)は良性です。脳腫瘍のうち原発性が約90%、転移性が約10%となっています。転移性脳腫瘍のうち肺癌が50%、乳癌が15%、大腸癌が10%ほどとなっています。成人の脳腫瘍は主に大脳に発生しますが、小児の場合は半数以上が小脳や脳幹に発生します。
 放射線治療の適応ですが、放射線感受性がよく根治可能なものとして松果体腺腫や髄芽腫などがあります。予防的適応が白血病と肺小細胞癌などです。神経膠芽腫は難治性で延命効果を目的に照射されます。

 治療における放射線照射方法には全脳全脊髄照射、拡大局所照射、局所照射、定位放射線治療などがあります。
 全脳全脊髄照射の適応には髄芽腫や脳室上衣芽腫、松果体部胚腫などがあります。定位放射線治療の適応には転移性脳腫瘍や聴神経鞘腫などがあります。
 このように脳腫瘍は腫瘍の種類が多彩で、腫瘍の種類によって線量や照射方法が決められています。また、生理的体動が少なく固定がしやすいため、高精度な放射線治療技術を生かすことができます。

次は口腔・口唇癌についてです。

 T1~2の早期例では完治照射、T3~4では放射線と手術を組み合わせます。
 頸部リンパ節陽性例では根治的頸部郭清が原則で、外部照射を行う場合には頸部リンパ節を照射野に含めます。早期例以外での手術例では、頸部リンパ節陰性でも頸部郭清を行います。進行例では化学療法の同時併用が有効とのデータ
があります。
 口唇の粘膜面は頬粘膜つまり口腔として扱います。口腔癌は舌(前2/3)、口腔底、頬粘膜、歯槽と歯肉、硬口蓋を指します。舌の後ろ1/3は中咽頭癌に分類されます。
 口腔癌の半数を占める舌癌はリンパ管に富み、動きが多いため初診例の30~60%にリンパ節転移を見ます。舌癌ではT1~2N0では組織内照射単独、N1では放射線治療後に頸部郭清、T3~4では術後照射を行います。
 歯肉癌は男性に多く下顎に多いです。骨浸潤がある例(T4)が多く手術が中心となります。

 口腔底癌の放射線治療ではT1~T3では組織内照射あるいは外照射と組織内照射の組み合わせ、外照射単独で行われます。総線量で70Gy程度とし、T4は原則として手術が行われます。

以下に口腔癌の分類を示します。

粒子線治療の特徴と治療の流れ

陽子線治療と重粒子線治療についてです。

 現在日本では数か所の施設で陽子線治療と重粒子線治療が行われています。
ブラッグピークという特性のため、X線などに比べて陽子線や重粒子線ではがん病巣に集中的に照射できるという利点があります。
しかし、保険が一部の疾患(前立腺癌、小児癌の陽子線治療と切除非適応の骨軟部腫瘍の重粒子線治療など)にしか適用されていません。したがって、保険適応外の疾患ではX線治療に比べて高額な治療費(約228万)がかかります。

陽子線治療と重粒子線治療のメリットデメリットを以下に示します。

・陽子線治療
メリット   病巣以降の分布をほぼ0にできる。
デメリット  生物学的効果比が低い(X線の1.1倍)
・重粒子線治療
メリット   生物学的効果比が高い(X線の2~3倍)、鋭いブラッグピーク
デメリット  病巣以降にも少し線量が付与される。

 また、照射野拡大法には散乱体法とスポットスキャニング法の2種類の方法があります。
 散乱体法は散乱体を用いて、フィルタやボーラスにより照射野を腫瘍の形に合わせていく方法です。中性子が発生する可能性があります。スポットスキャニング法は電磁石を用いてX軸とy軸方向で細いビームを作り、スポットを埋めていく方法です。施設によってこの方式は異なります。
 以下に各照射野拡大法について示します。

 治療に関わっているスタッフは医師、看護師、放射線技師、医学物理士、事務、メーカーの方などです。
 各職種の役割を以下に示します。
医師   ・・・問診や治療計画の確認
看護師  ・・・病棟の患者さんの体重測定や薬の内服管理、状態の悪い患者さんの場合、照射中の監視
放射線技師・・・照射や治療計画用のCT、MRI撮影、固定具作成など
医学物理士・・・主に治療計画
事務   ・・・患者さんのデータ管理、陽子線認知のための広報活動、カルテ管理、医師の診療予定の把握、電話対応など
メーカー ・・・機器管理など
また、多職種で現在の状況や今後の治療方針を話し合うカンファレンスが行われています。

 次は治療の流れです。

 初めに患者さんへの説明をします。次に固定具作成をします。この時に必要ならシェルも作成します。その後CT、MRI撮影をします。そして、CT画像とMRI画像を融合させたフュージョン画像を作成します。次にコンツールを作成します。コンツールとは腫瘍や臓器の輪郭を囲む作業のことです。その後治療計画を作成し、担当医師の承認を経て治療開始となります。
固定具作成から治療開始まではおよそ1週間かかります。

 照射室に入ってからの流れです。

 患者さんを照射室に案内し、患者さんにあわせた固定具をのせた寝台の上に寝ていただき、必要な時はシェルで顔や体を固定します。レントゲンまたはCTを撮り、治療計画時の画像と照合し位置を合わせます。次に、散乱体法の場合はボーラスを設置し、照射します。

治 療から退院までです。治療期間は患者さんの状態や疾患により異なりますが、約1~2か月です。治療終了後も受診の機会をつくり、治療効果や副作用の経過をみていきます。患者さんが安心して治療に望めるように関わっていくことが大切となります。

電子線とX線の性質

まずは電子線についてです。

 電子線が物質に入射するときの、相互作用について説明していきます。
 電子は軽いので基本的に散乱されやすいです。弾性散乱(運動エネルギーが保存)と、原子を励起・電離してエネルギーを失う非弾性散乱があります。また、原子核の正電荷によりクーロン引力を受けて制動放射をし、方向を変えます。散乱の確率(断面積)はエネルギーの2乗にほぼ反比例し、標的物質の原子番号の2乗に比例します。結果として、電子線は何回かの散乱によって入射方向に対して90°以上進行方向を変えることがあり、これを後方散乱といいます。このように、質量の小さい電子線は多重散乱によりエネルギーを落とします。たとえ一様なエネルギーの電子線であっても、その多重散乱の過程は統計的ゆらぎがあり、一様な飛跡を表しません。また、電子の速度が物質中での高速を超えると特定の方向に電磁波(チェレンコフ光)を放射するチェレンコフ効果と呼ばれる現象を起こします。条件は荷電粒子であること、速度v>c/n (nは物質の屈折率)、しきい値がある(水中で約250keV)、真空中では怒らないなどがあります。

次はX線の発生と性質についてです。

 様々な分野で使用されている、X線の発生と性質についてお話ししようと思います。
 X線には制動X線と特性X線があります。制動X線は高速電子が原子核との相互作用により発生します。特性X線は原子の安定化のために空位の内殻軌道に外側の軌道の電子が遷移するときに発生します。制動X線は連続エネルギースペクトルを示し、強度分布は入射電子のエネルギーと方向に依存します。最短波長はデュエン・ハントの式で与えられます(λ[nm]=1.24/V【kV】)。最大波長は管電圧のみで決まり、管電流やターゲット物質、原子番号などには依存しません。制動X線の全強度Iは管電圧の2乗、管電流i、ターゲットZの原子番号に比例します(I=kV²iZ)。供給電力はP=I/Pであるので、
発生効率はη=I/P=kVZ×100となり、管電圧と原子番号に比例します。
 制動X線のエネルギースペクトルでは管電圧を上げると最大エネルギーも全強度Iも増加します。
 特性X線では遷移に関係する軌道のエネルギーの差が発生X線のエネルギーになります。特性X線はモーズレーの式で表されます。
(√v=k(Z-S))ただし振動数v、k、Sは定数、Zは原子番号です。原子番号が大きいほど特性X線の振動数は大きくなります。
K殻に電子が遷移するのに出る特性X線はエネルギーは
EKα<EKβ<EKγ、放出確率はIKα>IKβとなります。
 特性X線と競合する過程にオージェ効果があり、これは特性X線放出の代わりに外殻電子を放出して安定化することです。特性X線の放出のしやすさを蛍光収率といい、原子番号が大きくなるほど大きくなります。

放射線治療について

放射線治療の基礎と使用されている加速器について書いていきます。

 放射線治療は手術、化学療法と並んでがん治療の3大療法の1つとなっています。
 放射線治療の目的は、腫瘍に線量を集中的に照射し、周囲の正常組織への線量を極力低減させて、癌を根治する、あるいは症状を緩和することです。この目的を達成するために症例ごとに、照射する部位と大きさ、照射方法、処方線量とその分割線量、併用する化学療法等、適切で個別化された放射線治療計画を作成する必要があります。

 放射線治療は外部照射と内部照射に大別されます。
 外部照射ではリニアックが用いられます。リニアックでは電子線治療やX線治療が行われます。陽子線治療や重粒子線治療ではリニアックに加えてシンクロトロンと呼ばれる円形加速器が用いられます。全国的に行われているのはX線や電子線治療です。陽子線治療や重粒子線治療は莫大な費用や広い敷地が必要なため、日本で十数か所でしか行われていません。また体内深部の腫瘍に集中して治療できる反面、一部の疾患にしか保険適用されておらず高い治療費がかかります。
 内部照射では放射線同位元素が用いられ、組織内照射や腔内照射などが行われています。子宮頸がんや舌癌、甲状腺がんなどの治療に用いられます。

 放射線治療に用いられる加速器についてです。
 加速器とは電場により粒子を加速して、高エネルギーを得るためのものです。静電場で加速するコッククロフトウォルトン加速器やヴァンデグラーフ加速器、高周波電場で発生するベータトロン、サイクロトロン、シンクロトロン、線形加速器(Linac)などがあります。現在医療の現場で主に用いられているのはサイクロトロン、シンクロトロン、線形加速器(Linac)です。
 サイクロトロンはPET(Positron Emission Tomography)検査でのPET核種生成にもちいられます。
 線形加速器(Linac)は電子線治療やX線治療の際に用いられ、陽子線治療や重粒子線治療の際の前段加速器に用いられます。4~10MeV程度まで加速されます。
 シンクロトロンは陽子線治療や重粒子線治療の際に用いられ、粒子をより高エネルギーに加速します。巨大で高額な加速器です。

 線形加速器は加速部とヘッド部に分けられます。
 加速部ではまず電子銃と呼ばれるもので電子を加速管内に打ち込みます。そして、クライストロンやマグネトロンといったマイクロ波発信管によりマイクロ波を、導波管を通して加速管内に供給します。そのマイクロ波によって電子が加速されます。加速方式には進行波型と定在波型がありますが、定在波型が多く使われています。
 ヘッド部では偏光電磁石で電子が90°あるいは270°曲げられます。その後、X線治療の場合はターゲット、平たん化(フラットニング)フィルタを用いて強度を平たん化します。電子線治療では散乱箔(スキャッタリングフォイル)で平たん化します。その後モニタ線量計で測定されます。またマルチリーフコリメータで腫瘍の形に合わせて照射野が形成されます。

治療に携わっていると、加速器開発や製作している人々はすごいと日々感じています。

今後は各治療などについて詳細を書いていきたいと思います。