感染症に関する最近の話題

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感染症に関する最近の話題についてです。

多剤耐性菌 multidrug-resistant bacteriaです。
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)は、抗生物質メチシリンに対する薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌の意味でありますが、実際は多くの抗生物質に耐性を示す多剤耐性菌です。抗生物質が多用される病院内に見られ、院内感染の起炎菌となります。パンコマイシンなどが第一選択薬となります。最近、パンコマイシン耐性黄色ブドウ球(vancomycin-resistant Staphylococcus aureus:VRSA)が出現しました。また、多剤耐性緑膿菌(multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa:MDRP)、多剤耐性結核菌(multidrug-resistant Mycobacterium tuberculosis:MDR-TB)なども報告されています。対策としては、計画的化学療法の実施と発生状況の監視および院内感染防止対策チームの活動が重要です。

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 輸入感染症 imported infectious diseaseです。
 国外から持ち込まれる感染症です。流行地帯で感染した保菌者が帰国後に発症することが多いです。
1)インフルエンザ influenza:過去には、2009年4月にメキシコから世界的に流行したとされるA型H1N1亜型インフルエンザ(新型インフルエンザ、豚インフルエンザともいわれる)があります。世界保健機関(WHO)は、世界的流行病(パンデミック)であることを宣言し、警戒水準をフェーズ6まで引き上げました。ただし、致死率は季節性インフル工ンザより低いとされています。
2)コロナウイルス重症急性呼吸器症候群(SARS):2002年から2003年にかけて中国から他国へ拡がりました。原因はコロナウイルスの飛沐感染、死亡率は約9%とされています。
3)工ボラ出血熱:1976年スーダンで初めて報告されました。原因は工ボラウイルスで、患者の血液、体液を介して感染します。死亡率は50%以上と高いです。

 食中毒です。
 近年の患者数別頻度は、ノロウイルス、カンピロバクター、サルモネラ属菌、ウ工ルシュ菌が上位を占めます。
1)ノロウイルス(norovirus):カキなどの貝類による経ロ感染で、急性胃腸炎をひきおこします。
2)腸管出血性大腸菌O157(Escherichia coli O157:H7):食材などで経ロ感染します。ペロ毒素をもち、溶結性尿毒症症候群や急性脳症をおこすと死亡することもあります。

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感染病原体の種類

感染病原体の種類です。

 ウィルス virusです。
 DNAかRNAのいずれか一方の核酸しか持っていないので、宿主細胞内に寄生して宿主の代謝機構に依存して増殖します。ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルスB型や、C型(HBV、HCV)、エプスタイン・パーウイルス(EBV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)などの慢性持続感染が腫瘍発生に関与することが知られています。組織学的に、核内封入体(サイトメガロ、ヘルペスなど)を認めるものもあります。

 細菌類です。
1)偏性細胞内寄生菌:別の生物の細胞内でのみ増殖可能で、それ自身が単独では増加できないという点で共通する細菌類
①クラミジア clamydia:細胞壁、代謝エネルギー生産系がない。性器クラミジア感染症や慢性結膜炎(トラコーマ)の原因菌。
②リケッチア rickettsia:細胞壁や自前のエネルギー生産系をもつが単独で増殖でさない、ダニ、シラミ、ツツガムシなどが媒介します。発疹チフスやツツガムシ病などが知られる。
2)マイコプラズマ mycoplasma:硬い細胞を有しない細菌、マイコプラズマ肺炎の原因
3)一般細菌 bacteria:単細胞性の原核生物、細胞の性状によるグラム染色の染色性によりグラム陰性菌とグラム陽性菌、形状により球菌と桿菌、生育条件により好気性菌と嫌気性菌に分類されます。次のような毒素を産生する菌もあります。①外毒素 exotoxin:細菌が産生して攷出する毒素、神経毒(破傷風やポツリヌス菌)、工ンテロトキシン(コレラや大腸菌、ブドウ球)など。②内毒素 endotoxin:大腸などのグラム陰性桿菌の細胞壁成分で、菌の破壊により遊離されます。抗生物質誘発性工ンドトキシンショックをおこすことがあります。
4)スビロへータ spirochaeta:グラム陰性らせん菌、梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマが重要です。

 真薗 fungusです。
 一般にキノコ、カビ、酵母といわれる生物群です。①表在性真菌症:ケラチン組織に寄生する白癬菌による白癬(いわゆる水虫)など。②深在性真菌症:臟器あるいは全身性に感染します。日川見感染が多いです。カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスなどです。

 原虫 Protozoaです。
 運動性のある単細胞性の真核生物です。運動能のある栄養型と運動能のない嚢子型の2つのタイプを示します。マラリア原虫、赤アメーパ、トリコモナス原虫などです。

 寄生虫 parasiteです。
 細胞生物である蠕虫です。①線虫類(アニサキス、回虫、蟯虫など)。②条虫類(広節裂頭虫:さなだ虫など)。③吸血類(日本住血吸虫、肝吸虫、肺吸虫など)に分類されます。

 外部寄生体です。
ノミ。シラミ,ダニなどです。

 プリオン prionです。
 タンパク質からなる感染因子です。タンパク質が誤って折りたたまれた状態を伝達することにより増殖します。ウシ海綿状脳症(BSE、狂牛病)や、ヒトのクロイツフェルトーヤコブ病(CJD)などが知られています。プリオンは、中枢神経系で細胞外凝集することでアミロイド斑を形成して正常組織を破壊し、神経変性疾患をひきおこします。脳の光顕標本に海綿状変化をみるのが特徹です。

病原体の体内拡散

病原体の体内拡散です。

 病原微生物の体内拡散の経路として、①連続的拡:組織間隙を連続性に広がる。 ②管内性拡散:気道、消化管、尿路、生殖器などの管内に広がる。③リンパ行性拡散。④血行性拡が挙げられます。

 血行性拡散として、以下が挙げられます。①菌血症 bacteremia:細菌が血液中に侵入して存在している状態。血液培養で菌が検出された場合に診断されますが、必ずしも臨床症状があるとは限りません。②敗血症 sepsis:感染巣から細菌が血液中に侵入、増殖した全身感染症をいいます。菌の強い増殖力と宿主の抵抗力低下が成立の条件となります。③ウイルス血症 viremia:麻疹や風疹などウイルスが血液中に侵入して全身に拡散した状態をいいます。この場合、全身に発疹を生じます。

感染症

感染症 infectious diseaseについてです。

 感染症の定義です。

 病原体が侵入し、増殖することにより生体を傷害しておこる疾患を感染症といいます。体内に存在する微生物がすべて病原性を持つわけでなく、腸内細菌叢のように宿主と共生関係を持つ細菌叢も存在します。比較的広い(国内~数か国を含む)一定の範囲でヒトからヒトに感染し、多くのヒトが発症することを流行といいます。さらに流行の規模が大きくなり、世界的に多くの患者が発生することをパンデミック(汎発流行)といいます。現在も、AIDS、マラリア、コレラなどはパンデミックの状態にあり、また毎年見られる季節性インフルエンザの流行も、パンデミックの一種といえます。

感染と発症です。

 感染が成立するには、①病原体の存在、②感染カ・病原性(菌の増殖カ、侵襲性、接種量、毒素産生性など)、③感染経路、④感染成立部位、⑤宿主防衛機構などいろいろな要因が関与します。

1)潜伏期:病原微生物が感染し、発症するまでの期間です。ウイルス感染症では、ウイルスに的な潜伏期間が存在します。
2)顕性感染:感染後発症することをいいます。
3) 不顕性感染:感染しても症状の見られない感染の状態です。これの持続した状態を無症候性キャリアといいます。
4) 遅発性感染:極めて長い潜伏期を経て発症します。麻疹ウイルスによる亜急性硬化性全脳炎、プリオンによるクロイツフェルト―ヤコブ病などです。

 感染経路です。

 病原微生物や病原微生物に感染したヒトに汚染されたものはすべて感染源となります。感染経路には、①接触、②経気道、③経ロ、④昆虫媒介、⑤経皮、⑥血中ウイルス、⑦母子間の垂直(経胎盤、授乳) 感染などがあります。

 感染に対する宿主の防御機構です。

 非特異的防御機構をしめします。

1)皮膚:表層は角化層から成り、接着した細菌と共に毎日剥脱しています。また、皮脂腺で作られた脂肪酸により酸性状態が保たれており、細菌繁殖は抑えられています。
2)呼吸器:大きな病原微生物は、粘膜線毛上皮で捕提され、杯細胞から分泌される液に取り込まれ、線毛運動により喉頭に戻され、飲み込まれ、または喀出されます。肺胞に達する小さいものは、肺胞内でマクロファージや好中球に貪食されます。
3)消化管:①粘液産生細胞から分泌された粘液による保護作用、②胃液中の酸、③膵液の消化酵素、①炎症細胞から産生されるIgAなどの防御機構があります。

炎症とケミカルメディエーター

炎症とケミカルメディエーター chemical mediatorについてです。

炎症反応の調節には多くの化学物質が関与しており、これらはケミカルメディエーターと呼ばれます。

1)アミン類:肥満細胞内にあるヒスタミンやセロトニンで、急性炎症の初期に短時間します。
2)キニン類:キニノーゲンからタンパク買分解酵素であるカリクレインによりすまされるプラジキニンは、血管拡張、血管透過性亢進、疼痛作用を有します。
3)補体類:血清中のタンパク質で、活性化には、①古典的経路:抗原抗体複合物により活性化。②非特異的経路:グラム陽性菌細胞壁上の多糖類やグラム陰性菌の内毒素により活性化、という2つの経路があります。C3a、C5aは血管透過性の亢進、C5aには白血球遊走、C3bには好中球、マクロファージによる貪食ををさせるオプソニン作用があります。
4)アラキドン酸代謝産物:刺激により細胞膜リン脂質にホスホリバーゼが働いてアラキドン酸が遊離し、①シクロオキシゲナーゼ経路:各種プロスタグランジンが合成されます。②リポキシゲナーゼ経路:ロイコトリエンが合成されます、これらは、血管拡張、血管透過性亢進、白血球遊走、発熱、疼痛を引さ起こします。
5)サイトカイン cytokine:炎症反応に参加したり、局所で活性化した細胞から産生され細胞間の情報伝達物質として働く活性物質の総称です。サイトカインは、細胞表面に存在する特異的受容体と結合することにより微量で作用します。しかし、内分泌ホルモンとなり、①同じサイトカインを多糖類の細胞が産生、②同じ細胞が多種類のサイトカインを産生、③近傍にある細胞に作用(パラクリン)あるいは自己細胞自身に直接作用(オートクリン)を発揮します。リンパ球に由来するものをリンホカインとよびますが、それに加え、リンパ球だけでなく他々の白血球、線維芽細胞、内皮細胞などから産生されて
多くの細胞の相互作用に関与するものがインターロイキン(Interleukin;IL)と名づけられています。

炎症の分類

炎症の分類についてです。

炎症の分類には、形態学的分類と経過による分類があります。

Ⅰ形態学的変化による分類
1)滲出性炎 exudative inflammation:血管内成分の滲出の強い炎症です。
①漿液性炎 serous inflammation:フィブリンを含まない血漿成分が滲出、皮膚の水疱など、粘膜の漿液性炎をカタルといいます(アレルギー性炎など)。
②線維素性炎fibrinous inflammation:主成分がフィブリン、ジフテリアなど膜形成するものを偽膜性炎ともいいます。
③化膿性炎 purulentinflammation:膿性滲出物からなります。膿瘍 abscess(膿の蓄積した状態)、蜂巣織炎 phlegmon(小膿瘍の広汎な広がり、虫垂炎など)、蓄膿(腔内に膿が蓄債した状態、副鼻腔の蓄膿症 empyemaなど)、壊疽 gangrene(壊死巣に嫌気性が2次感染した状態)。
④出血性炎 hemorrhagic inflammation:主成分が赤血球、インフルエンザ肺炎など。

2)増殖性炎 productive inflammation:線維芽細胞の増殖、マクロファージ、リンパ球、形質細胞浸潤と線維化を特徴とする炎症で、慢性経過をとります。肝硬変など。

3)肉芽腫性炎 granulomatous inflammation:単球・マクロファージ由来の類上皮細胞、多核巨細からなる結節(肉芽腫)を形成する炎症。結核、梅毒、異物肉芽腫など。

Ⅱ経過による分類と転帰
1)急性炎症 acute inflammation:急激に始まり急速に経過する炎症で、およそ数日から半月ぐらいの経過です。炎症の5徴候が典型的な症状で、局所血管の拡張による充血(発赤、微熱)、透過性亢進による浮腫(腫張)が生じます。さらに好中球を主体とする炎症細胞が動員されます。好中球は、血管内の辺縁に移動、内皮上を回転し接着分子の働きで血管内皮紹胞に接着します。次に、血管外に遊出し、異物や病原体などを貪食・消化作用により除去します。急性炎症の転帰は、①治癒、②腫瘍化、③潰瘍化、④瘢痕、⑤慢性化などです。全身反応としては、①発熱、②白血球増多、③リンパ節腫大、④赤血球沈降速度の亢進、⑤急性期反応タンパクの増加(c反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドAタンパク質など)などが挙げられます。

2)慢性炎症 chronic inflammation:炎症刺激が持続して長期にわたる炎症です。リンパ球、形質細胞、マクロファージが主体です。慢性炎症には、①慢性非特異的炎症(炎症の遷延、線維化、組織構築の改変など)、②肉芽腫性炎症(肉芽腫、瘢痕化)が挙げられます。

炎症について

炎症と感染症についてです。

 病原微生物をはじめ様々な原因により、組織は傷害を受けます。それに対し、原因を除去し損傷を修復する一連の反応過程が炎症で、一般的には防御的意義をもちます。
 感染症とは、病原生物 (ウイルス、細菌類、真菌、原虫、寄生虫など) が体内に侵入し増類して起こる疾患をいいます。

 炎症 inflammationについてです。

 炎症の定義です。

 組織傷害が加わると、傷害因子の除去と傷害部位の修復反応がおこります。これら一連の防御反応を炎症といいます。
局所での炎症の5徼候には, ①発赤 rubor(redness)、②発熱 calor(heat)、③腫張 tumor(swelling)、①疼痛 dolor(pain)、⑤機能障害応 function laesa(loss of function) があります。
 発赤は血管拡張、充血、発熱は血管拡張、代謝亢進、発熱物資の産生、腫張は充血、うっ血、血管透過性の亢進によりおこります。疼痛は、滲出液、組織の酸性化、タンパク質分解産物、ケミカルメディエーター (化学仲介物質) による神経終末の刺激により、機能障害はこれら4徴候などに起因する臟器、組織の機能不全としておこります。炎症の5徴候には、様々なケミカルメディエーターが関与します。

炎症の原因です。

 組織傷害をひきおこすものは、すべて炎症の原因(炎症刺激)となります。
1)物理的因子:機的傷害(創傷、打撲など)。熱、紫外線、放射線、電気など
2)化学的因子:酸、アルカリ、毒物、重金属、有機溶媒、体液(膵液、胆汁)など
3)生物学的因子:病原生物など
4)免疫学的因子:アレルゲン(アレルギーの原因物質)、自己抗体、免疫複合体など

 炎症細胞の種類と働きです。

 局所に出現して炎症に関与する細胞を炎症細胞といいます。
l)好中球 neutrophil:急性期に出現し殺菌作用や病原細胞、壊死物質を貪食、消化し、局所から除去します。顆粒にはベルオキシダーゼ、リゾチームなどを含みます。
2)リンパ球 lymphocyte:主に慢性期に出現します。T細胞(細胞性免疫に関与)とB細胞(液性免疫に関与)があります。
3)マクロファージ macrophage:血液中では単球、組織中では組織球と呼ばれます。好中球と同様に貪食作用を有します。さらに、免疫反応に関与し、抗原情報をT細胞、提示します。肉芽腫性炎にも出現します。
4) 形質細胞 plasma cell:B細胞から分化した細胞で液性抗体を産生します。
5) 好酸球 eosinophil:アレルギー反応や寄生虫感染で局所に出現します。
6) 肥満細胞 mast cell:血液中では好塩基球といいます。IgEレセプター (受容体) を有し、ヒスタミンなどを放出し、Ⅰ型アレルギーに関与します。

iPS細胞

iPS細胞 induced pluripotent stem cellについてです。

 山中伸弥所長が2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことからご存知の方も多いと思います。

 iPS細胞とは誘導多能性幹細胞のことです。通常は生殖細胞である精子と卵子が受精して受精卵ができます。受精卵は分裂を綴り返し、個々の細胞は組織を構成する形態的、機能的に分化した細胞 (体細胞) となり、外胚葉、内胚葉、中胚葉由来の全身各臟器ができあがります。このように多様な分化能を有する細胞は幹細胞とよばれます。細胞は様々な細胞に分化しますが、通常一度分化した細胞は二度と幹細胞には逆もどり(脱分化)せず、分化のプロセスは不可逆的です。各臟器の中でも心筋細胞や神経細胞などは終末分化しており、一度失われると、分裂、増殖しません。すなわち再生しないです。現在白血病に対しては、強力な抗薬での治療後に、あらかじめ分離しておいた造血幹細胞を患者に移植し造血細胞を再構築するという治療がおこなわれています。血液系以外でも幹細胞が分離できれば再生医療の道が開けますが、幹細胞は分化した体細胞からは作ることができず、治療に使用可能な数の細胞を得ることは難しく、幹細胞を人工的に作り出すことは長い間未解決の間題でした。

 2006年に京都大学再生医療研究所の山中伽弥教授は、生体の分化した体細胞である線維芽細胞に4つの転写因子 Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycを導入すると、少ない頻度ではありますが分化の方向を逆もどり(リプログラミング)させ、幹細胞に誘導できることを発見しました。この4つの転写因子は山中ファクターとよばれています。iPS細胞は、神経、筋、血管、内分泌細胞など様々な組織に分化誘導させることが可能なため、再生医療にとって極めて重要な発見であるといえます。また、受精卵のような胚幹細胞embryonic cell (ES細胞)を用いる場合は、倫理的な間題も常につきまといますが、iPS細胞はその出所が成人(本人) 皮膚の線維細胞などの体細胞であるため倫理間題にはなりません。iPS細胞についてはローマ法王も極めて重要な発見である旨異例のコメントをだしました。c-Mycは前癌遺伝子産物なので現在はc-Mycを用いない方法が開発され、iPS細胞誘導効果の改善もなされてきました。またiPS細胞を介さずに線維芽細胞から神経細胞を作成する別の3つの転び因子も判明してきており、細胞のリプログラミングの研究は大きく発展しています。発見当初は遺伝子導入にはレトロウイルスが用いられましたが、現在はゲノムに組み込まれないエピソーム型のベクターの開発など遺伝子導入法肱には様々な改善が加えられており、近い将来、心筋梗塞、脳梗塞、脊髄損傷、パーキンソン病などの様々な疾患に対する臨床応用や、細胞シートからの角膜、心臓、肝臓、歯牙、甲状腺組織、肺組織、食道粘膜などの人工臓器の作製が期待されており、今後も発展していくと思われる分野です。

創傷の治癒

創傷の治癒 heal ing Of injuryについてです。

創傷が大きな組織欠損を供わず、創面を外科的に容易に密着させうる場合は少量の肉芽形成のみで治癒します(一次性治癒)。一方、表皮や粘膜を含んで大きな組織欠損がおこり、外科的な縫合も不完全で血流障害もあるような場合は、欠損部位の補填のため比較的大きな肉芽を形成し、下記に述べるような瘢痕を伴い、周辺組織の再生もみられます。これを二次性治癒とよびます。

 創傷の修復機序 mechanism of repairです。
 組織欠損部位では実質細胞、支持組織の再生、大きな欠損ではさらにその欠損を補填する線維芽細胞の増生、毛細血管の新生が進み肉芽を形成します。新鮮なときは欠損部を十分に埋めていますが、時聞とともに膠原線維が増加、線維化が進み硬度も増し収縮してきます。これを瘢痕とよびます。体表面の組織欠損が広い面積でおこった場合、周辺からの表皮層の再生が十分におこらないと、欠損部中央に肉芽の露出部が残り、瘢痕化とともに機能障害をおこしてきます。修復にかかわる因子としては、それぞれの組織、臓器の再生力のほかにも全身状態としては、年齢、栄養、他疾患の有無などが影響し、局所条件では感染の行無や血管分布すなわち血管の新生と血行の確保が十分かどうかが重要です。下大腿骨前面の創傷が治癒しづらいのは皮膚直下に骨膜が位置している解剖学的特徴によります。褥瘡が治癒しづらいのは合併する観戦もさることながら、褥瘡そのものが元来低栄養状態における血行障害によって発生するからです。

 ケロイド keloidです。
 修復に際して肉芽形成が過剰におこり、周囲の正常皮膚面より盛り上がって瘢痕化するものを肥厚性瘢痕とよびます。加えて真皮内に肥大化した多数の膠原線維が縦横に増殖している場合をケロイドとよびます。その発生は個人の体質によるとされますが、精巣摘出者や若い女性に多くみられることから、ホルモンの影響があるともいわれています。また、広島、長崎の原爆被曝者に多数のケロイドによる障害が発生したのは広く知られています。

以下にケロイドに関する図を示します。

化生、肉芽

化生metaplasia (異所性分化heterotoptic differentiation)についてです。

 慢性の刺激や劣悪な環境が継続すると適応の結果として、分化、成熟した細胞が異なる影態や機能を示すに至る状態をいいます。変化は同一胚葉起源内に限られ、分化系統の異なる細胞への化生はおこりません。

上皮細胞間の化生です。
子宮頚管上皮や気管上皮の局平上皮化生は腺上皮ないし線毛円柱上皮が機能を消失し、抵抗性の高い上皮に変化する低分化の化生で、退行性化生とよびます。逆流性食道炎では扁平上皮が腺上皮に変化します(腺様化生、パレット食道)。慢性胃炎では、ときに腸上皮型の単細胞腺(杯細胞)の出現がみられ、これを腸上皮化生とよびます。

間葉組織の化生です。
結合組織から骨や軟骨への化生の例として、乗馬する人の大腿部(筋・軟部組織)にみられる”騎手の骨” (骨化生) があります。骨や軟骨から結合組織への変化はおこりません。

次は肉芽についてです。

 組織欠損、傷害や異物の侵入、組織の異物化に反応して間葉系組織の強い新生、特に線維芽細胞の増加によって増生される組織です。いったん形成された肉芽は消失せず線維化、瘢痕化して残り、二次的障害の原因になることがあります。

 肉芽の形成 granulationです。
 肉芽とは傷害、欠損部位や異物の周辺組織からの線維芽細胞、新生してくる毛細血管、組織球や好中球などからできる軟らかい組織で、感染などのない新鮮な肉芽は豊富な毛細血管の充血のため赤味の強い弾力のある軟らかさをしめします。一方、肉芽に感染が合併すると表面は白っぽく崩れ、弾力がなく滲出液を伴うようになります。時間の経過とともに毛細血管は減退し充血がなくなり、滲出細胞は少なくなり、線維芽細胞から多量の膠原線維が産出され硬度を増し収縮します。肉芽のはたらきとしては創傷治癒のほか、器質化(異物や病的産物などに肉芽が入り込み、線維化、瘢痕化します)や被包化(異物や変性組織の周囲に肉芽が新生して、ときに節状になる)があります。

 肉芽腫 granulomaです。
 結核などの細菌感染などに際して特異な肉芽結節形成をしめす一連の疾患を特異性増殖性炎とよび、その結節を特異性肉芽腫とよびます。一方、組織内に侵入した異物に対する反応で、異物の消化吸収のため多数の多核巨細胞を含む結節状肉芽を異物肉芽腫とよびます。

以下に腸上皮化生について示します。