放射線防護の原則(内部被ばく)

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 医療においては、放射性物質を非密封状態で使用することが多いです。その非密封放射性物質がいずれかの事情により体内に取り込まれ、人体内から組織にエネルギーを与えることを内部被ばくといいます。
 さらに、人工RI核種に限らず、自然放射線による被ばく線量の半分近くを占めているのが、空中に自然に存在しているラドンガスからの内部被ばくによるものです。核種の内部被ばくの危険度は、種々の取り扱い条件により大きく異なりますが、特記事項としては以下のものが挙げられます。
・α各種
・低エネルギーβ核種
・長半減期核種
・臓器集積性核種
などです。
 体内に放射性物質が取り込まれた場合、その物質の物理的半減期Tpと、組織生理機能とその物質の生理的活性に対応した生物的半減期Tbに応じた関数としての有効(実効)半減期Teffで、人体に影響を与え続けます。
1/Teff=1/Tp+1/Tb
この式は診療放射線技師国家試験や放射線取扱主任者試験でもよく出る式となっています。
体内に取り込まれた核種により、特異的な臓器に集積するもの、全身へ分布するもの、核種の違いなどで影響の大きさが異なるので注意が必要です。以下の図に詳細を示します。

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 非放射性物質の体内への摂取経路は、経気道・経口・経皮の3経路です。したがって、非密封放射性物質使用施設の管理区域内では、喫煙・食事・飲水は禁じられています。また取り扱い時は必ず手袋をしなければなりません。さらに、不用意な汚染により体内にRIを摂取しないように、液体をこぼしたような場合は、すぐふき取り、こぼした箇所にマークを付け、次に使用する人に不要な汚染拡大をさせないような配慮が必要です。

 内部被ばく低減の3原則は、まずは被ばく3経路の遮断が基本となります。体内に取り込まれなければ内部被ばくは発生しないので、摂取させないことが防護の基本となります。
 取り込み防止のための具体的な注意事項として3D2Cの原則が知られています。以下に示します。

3D
dilute:希釈
可能な限り低濃度で用いる。体内に入った時の危険性を低下させる。

disperse:分散
換気、廃液希釈を行い、低濃度にすることにより、危険性を低下させる。

dicontaminate:除去
汚染除去、RIを取り除くことにより、危険性を低下させる。

2C
contain:閉じ込め
容器への収納、フード内使用により、RIが拡散しないようにする。

concentrate:集中化
線源保管など、管理の分散により線源不明のないようにする。

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放射線防護の3原則(外部被ばく)

放射線が利用されるときには防護体系に従って行われます。

 防護の目的に沿って、放射線被ばくを伴う新たな行為とすでに導入している行為を変更する場合に対してどのような放射線防護の方策を講じなければならないか示した体系が、放射線防護体系です。
その具体的方策が(1)行為の正当化、(2)防護の最適化、(3)個人の線量限度の3つになります。

外部被ばく防護の3原則を以下に示します。
①線源から距離をとる。(距離)
 放射線からの吸収線量は、単位断面積にどれだけの放射線エネルギーが入射しているかによります。線源から離れると、単位断面積に入射する放射線量は離れた距離の2乗に反比例して減少します。これを「距離の逆2乗則」と呼びます。
以下の図のように、線源に近づいている場合は、ほんの少し離れるだけで、線量が激減することが分かります。線源より1m以上離れると最初の1/100以下になります。また、ある程度離れるとBG(バックグラウンド)レベルとなり、さらに離れても減少効果にさほどの変化はありません。
 発生源から離れる、トングなどを使用して線源に接近しない、などの防護における「距離」の有用性を理解することはとても重要です。

②線源からの放射線を遮蔽する。(遮蔽)
 線源と人体との間に、放射線吸収体(遮蔽体)を置くことにより、人体の吸収線量は減少します。遮蔽体は、線源からの距離がとれないような場合に活用します。しかし、放射線の線質及び透過能力、遮蔽体の材質や遮蔽能力(質量減弱係数や質量阻止能)により、常に有効な遮蔽効果が期待できるわけではありません。
 光子(X線やγ線)の遮蔽で、特に高エネルギーの光子に対しては、透過能力が強いため、遮蔽体を用いることのメリットとデメリット(防護衣着用の重さ、機能性の低下など)を考慮して遮蔽体使用の適否を判断しなければなりません。
 また、高エネルギーβ線の安易な遮蔽により、かえって透過能力の高い制動X線が発生することにも配慮しなければなりません。
 医療現場ではα線をしようすることはほとんどありません。α線そのものの空気中での飛程は数cm程度ですが、α崩壊によるγ線の放出や、特定核種との(α,n)反応による中性子の発生に注意しなければなりません。α線での制動X線発生はほとんど考慮しなくてよいです。
 10MeVを超える電子線、X線の利用が増加し、それに伴う光核反応(X,n)で発生する中性子の遮蔽への配慮も必要になってきます。

③線源を扱っている時間を短くする。(時間)
 放射線を取り扱う時間に比例して人体の吸収線量は増加しますが、どうしても必要な作業時間が存在し、それ以上短くすることができないです。可能な限り、短時間でも作業を終えることを念頭に置いて、防護に際しては距離効果と遮蔽効果を有効活用することが大切です。

この中で最も効率が良いのは「距離をとる」ことです。

これらの原則にしたがって、放射線の取り扱いをする必要があります。

放射線管理手帳

放射線管理手帳についてです。

 1、手帳制度の目的
 昭和52年、当協会に放射線従事者中央登録センター(以下「中央登録センター」という。)が設立され、被ばく線量登録管理制度と相まって運営される放射線管理手帳制度(以下「手帳制度」という。)が発足しました。この手帳制度は、国の指導のもとに原子力事業者、元請事業者等の協力により、中央登録センターが主体となって自主的に運営している制度です。
 手帳制度は全国統一様式の放射線管理手帳(以下「放管手帳」という。)を用いて、原子力発電所等の原子力施設に立ち入る者の被ばく前歴を迅速、かつ的確に把握すること及び原子力施設の管理区域内作業の従事に際して必要な放射線管理情報を原子力事業者等に伝達することを目的としています。

 2.手帳制度のしくみ
 手帳制度では、原子力施設の管理区域内作業に従事する場合には、「労働安全衛生法」上の事業者もしくは作業者に対して放射線に関わる労働安全衛生の責任を有する事業者(以下「事業者」という。)の責任であらかじめ放管手帳を取得する必要があります。このため、事業者は、全国各地の中央登録センターが認定した放射線管理手帳発効機関(以下「手帳発効機関」という。)に当該作業者の手帳発行の申請を行います。作業者本人が直接手帳発行の申請をすることはできません。
 手帳発効機関はこの申請に基づき、中央登録センターに登録して中央登録番号を取得し、放管手帳に中央登録番号等必要事項を記入のうえ、有効な放管手帳を発行し、事業者に交付します。
 事業者は原子力施設の管理区域内作業に従事させる者に、必要事項を記入したこの放管手帳を携行させ、手続きを行った後、放射線業務に従事させることになります。

 3.放管手帳の役割と機能
 原子力施設で放射線業務に従事する際に放管手帳を提示することにより、中央登録センターに登録されていること、被ばく前歴、放射線防護教育や健康診断の実施状況など放射線業務従事者としての要件を満足していることの証明が可能となります。
 また、作業実施後は、従事した原子力施設名や被ばく線量等が記入されていきます。
 そのほか、放管手帳の記載内容を従事者自身が確認することにより、自己の放射線管理状況を把握することもできます。
 なお、この放管手帳には原子力施設だけでなく、ラジオアイソトープ(RI)事業所等の放射線施設における被ばく線量等の状況についても記入されているため、放射線管理全般の把握が可能です。

 4.放管手帳の取得
 放管手帳の取得手続は、事業者が行います。作業者本人が直接手帳発行の申請をすることはできません。
 事業者は、放射線業務に従事させる者の放管手帳を取得するために、「放射線管理手帳発行等申請書」(以下「手帳発行申請書」という。)を作成し、申請対象者が本人であることを証明する公的資料(運転免許証等)の原本を添えて、手帳発効機関に申請します。ただし、原本を提示できない場合は「公的資料の原本確認証明証」を用いてコピーを提出します。このとき被ばく前歴や個人識別項目などの確認が行われるほか、中央登録センターに個人情報を登録することなどについて本人の同意を得ます。
 手帳発効機関は、事業者から提出された手帳発行申請書の個人識別項目を確認し、中央登録センターに登録します。この登録により中央登録センターから個人の中央登録番号が付与され、放管手帳に所定の事項が記入された後、本人の写真に承認シールを貼付し、有効な放管手帳として事業者に発行されます。
 ・公的資料とは
 ・公的資料の原本確認証明書 

 5.放管手帳の取扱い及び管理
 事業者は、発行された放管手帳の記入内容等を本人に提示し、間違い等のないことを確認します。
 放管手帳は本人の所有物になりますが、業務中は、被ばく線量の記入など必要な放射線管理情報を最新、かつ適切な状態に保つため、事業者が預かり保管管理することになります。
 なお、事業者は、手帳所持者が退職等で事業所を離れる時には、本人に放管手帳を返却します。再度、他の事業所で放射線業務に就く場合には、作業者(本人)がこの放管手帳を提示し、必要な手続きを行うことになります。

 6.環境省が発注する除染工事における放管手帳の使用について
 環境省では、除染特別地域内で環境省が発注する除染等工事においては、「除染等工事共通仕様書」により、除染等作業員に可能な限り放管手帳を取得させるとしています。
 事業者には、放管手帳を信頼性のあるものとするため「記入要領」(注)に基づき、正しく記入することが求められますが、放管手帳及び「記入要領」は本来、原子力施設の管理区域内作業を想定しています。このため、環境省が発注する除染工事に係る事業者は、放管手帳の記入に際して「放射線管理手帳 運用要領・記入要領(事業者用)読み替え表」により「記入要領」の読み替えを行って、的確に放管手帳を運用する必要があります。

 (注)「放射線管理手帳 運用要領・記入要領(事業者用)」 販売先:(株)通商産業研究社 (℡:03-3401-6370)

   「放射線管理手帳 運用要領・記入要領(事業者用)読み替え表」 

放射線防護体系

放射線が利用されるときには防護体系に従って行われます。

 防護の目的に沿って、放射線被ばくを伴う新たな行為とすでに導入している行為を変更する場合に対してどのような放射線防護の方策を講じなければならないか示した体系が、放射線防護体系です。
その具体的方策が(1)行為の正当化、(2)防護の最適化、(3)個人の線量限度です。

(1)行為の正当化
 放射線被ばくを伴う行為は正味の便益があることが確実な場合以外に導入してはならないです。行為の導入で最初に行うのが「行為の正当化」です。例えば放射線治療の場合、放射線治療の利益(癌の治癒)が有益な影響(被ばく)を上回るのが確実でなくてはならないというものです。また、放射線診断(一般撮影やCT、核医学検査など)の場合、放射線診断の利益(病気の診断)が有益な影響(被ばく)を上回るのが確実でなくてはならないというものです。

(2)防護の最適化
 行為の正当化で導入が決まった後に図られる方策です。すなわち、線源からの被ばくによる放射線影響をできる限り少なくするために、被ばく線量、被ばくする人数、被ばくの機会を社会的・経済的要因を考慮して合理的(ALARAと呼びます)に達成できるように低くすることです。ただし、ALARAはできるだけ被ばく線量は低く抑えようと努力する一方で、低い被ばく線量をさらに最小化しようという努力が、その効果に対して不釣り合いに大きな費用や制約、犠牲を伴う場合には、よしとしないという意味を持ちます。

(3)個人の線量限度
 個人の線量限度とは、作業者の場合は作業環境中に、一般公衆の場合は一般環境中にあるすべての行為又は放射線から、個人が受ける線量の上限値のことです。

自然放射線についてです。

 皆さんは自然界(土壌、水中、空気中など)に存在する放射性物質からの放射線や、2次放射線を絶えず受けるとともに、体内の放射性物質による体内被ばくを受けています。UNSCEAR1988年報告によると、通常のバックグラウンド地域での自然放射線源による実効線量への寄与は東京で0.65mSvといわれています。
 自然放射線による被ばくは、地殻中に存在する放射性物質の量、高度差等によりかなりの差があります。屋外における年間の体外被ばくは東京で0.65mSv、大阪で0.95mSvです。イランのラムサーでは400mSv、ブラジルのボソス・デ・カルダスで250mSvに達する地域もあります。1人当たりの自然放射線は日本平均で1.48mSv、世界平均で2.4mSvといわれています。