色素代謝の障害②

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へモジデリン(血鉄素) hemosiderinです。

 へモジデリンは赤血球の破壊によりへモグロピンをもとにして網内系細胞でつくられた鉄を含む黄掲色の顆粒状色素で、正常でも肝、脾、骨髄にみることがあります。溶血性貧血や大量輸血のあとでは過剰の沈着をしめし、臓器が褐色調となることをへモジデローシス(血症) hemosiderosisといいます。また、古い出血のあとにヘモジデリン沈着がみられるほか、心不全などで肺うっ血が持続するとへモジデリンをもった大食細胞が肺胞内や喀痰中に多数出現します。これを心不全細胞(または心臓病細胞) heartfailurecellといいます。へモジデリンは3価の鉄イオンをもっためベルリン青染色で青色に染まります。一方、全身性のヘモジデローシスで実質細胞にもへモジデリンの沈着が及ぶとへモクロマトーシス hemochromatosisといいます。鉄を含まない黄~赤褐色の針状~粒状色素はヘマトイジン hematoidinといい、大きな出血巣にみられます。

メラニン melaninです。

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 メラニンは皮膚、毛髪、網膜、虹彩などに生理的に存在する黒褐色、顆粒状色素で、メラニン産生細胞(メラノサイト)でつくられます。多量の紫外線を浴びておこる日焼けは、皮膚基底層細胞にメラニンが増加するためにおこります。アジソン病は副腎皮質機能不全のため、通常は抑制されていた下垂体からのメラノサイト刺激ホルモン(MSH)が活性化し、皮膚のメラニンが増加します(メラノーシス melanosis)。
 メラノサイト由来細胞の増殖である色素性母斑や悪性黒色腫では多量のメラニンが形成され、黒色を呈します。一方、色素脱失により白色をしめすものを白斑といい、先天性白症のうち全身性に色素が欠如するものは劣性遺伝です。

リポフスチン(褐色色素) lipofuscinです。

 萎縮した心筋、肝細胞、神経細胞などにみられる黄色の粒状色素で消耗性色素ともいいます。化学構造は明らかになっていませんが、リソソームに由来し、生成には過酸化脂質が関与すると考えられます。生理的にもみることがありますが多くは萎縮に伴って核周辺の細胞質内に増加することが多いです。

体外性色素です。

 体外から入った色素はある程度は処理され排泄されますが、多くは一定の部位にとどまります。炭粉は気道から入ってやリンパ節に沈着し炭粉沈着症anthracosisをおこします。入れ墨は真皮内に墨や朱を沈着させたもので永久的に残ります。

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色素代謝の障害①

色素代謝の障害についてです。

 色素が異常な量または異常な場所に沈着することを色素沈着 pigmentationといい、このうち体内でつくられるものを体内性色素、体外から入り込んで沈着するものを体外性色素といいます。

黄疸 Jaundice (高ビリルビン血症 hyperbilirubinemia)です。

 ピリルピンはヘモグロビンの代謝産物として脾臓や骨髄で作られる黄掲色の色素で、肝を経て胆汁中に掛泄されます。鉄は含みません。血中のピリルビンが常に増加し、組織が黄橙色に着色された状態を黄疸といいます。このピリルビンは次のような過程を経て合成されます。
 まず破壊された赤血球に由来するヘモグロビンはマクロファージに取り込まれて分解され、ピリルビンになり、アルプミンと結合して問接(非抱合)型ビリルピンとして肝細胞に取り込まれます。肝細胞内でアルプミンと離れ、グルクロン酸抱合を受けることにより直接(抱合)型となって肝細胞から胆道系に分泌されます。したがって黄疸患者の血清ビリルピンは疾病の種類によって直接型、間接型ピリルビンの割合が異なっています。

1)溶血性黄疸 hemolytic jaundice :赤血球が大量に破壊されるためにおこる黄疸で、間接型ビリルビンが増量します。先天性と後天性とがあります。核黄疸はRh型不適合、ABO型不適合による新生児重症溶血性黄疸で、通常成人では侵されない大脳基底核、脳幹に未発達な血液脳関門を通った間接型ビリルピンが沈着し、脳性小児麻痺、錐体外路障害がおこります。

2)肝細抱性黄疸hepatocellular jaundice:肝細胞の傷害に伴う黄疸で、肝細胞の破壊によって間接型ピリルビンの処理能力が低下し、また肝細胞によってつくられた胆汁が逆流などして変則的に流れるため、間接型、直接型ビリルピンがともに増加します。ウイルス性肝炎などのときにみられます。

3)閉寒性mobstructlve jaundice :胆石症や胆管癌、膵頭部などに伴う胆管の通過障害によっておこる黄疸で、直接ピリルピンが胆汁うっ滞をおこし、胆管内圧の上昇とともに胆汁はリンパ管から胸管へと流れ込み、血中に入って黄疸をおこします。この場合、アルカリホスファターセ活性も著しく増加します。
 ピリルピンはヨウ素反応で証明され、ピリルビンがあるとヨウ素の酸化作用によってリベルジンとなり緑色に変化します。黄疸臟器をホルマリン固定液に入れると緑色に変わるのも酸化作用のためです。

無機質(ミネラル)代謝の障害

無機質(ミネラル)代謝の障害についてです。

 高カルシウム血症 hypercalcemiaと低力ルシウム血症です。

 カルシウムは体内に最も多い無機質で、体重の約1%、その99%は骨に含まれています。血清中のカルシウムは常に一定量(8.5~10.5mg/dL、4.2~5.2mEq/L)が保たれていますが、副甲状腺機能亢進、ピタミンDの過剰、腎機能不全、骨腫瘍などによって血液中力ルシウム濃度が増加した状態を高カルシウム血症といい、反対に副甲状腺機能低下やビタミンD欠乏、Ca摂取や吸収の低下、Ca需要の増加、Ca排泄の増加などにより低下した状態を低カルシウム血症といいます。高カルシウム血症では血管壁、尿細管上皮などにカルシウム沈着をきたすほか、全身の脱力感、不整脈、悪心・嘔吐、消化性潰瘍、急性膵炎、多尿、腎不全、関節痛、皮膚掻痒感、結膜充血などの原因となります。一方、低カルシウム血症ではくる病(小児)、骨軟化症(成人)の原因となります。

 石灰化 calcificationです。
 
 石灰が正常では認められない組織に沈着することで、古い結核結節、粥状硬化をおこした動脈壁、瘢痕組織などにみられます。ときには骨化を伴うこともあります。高カルシウム血症のとき骨組織から石灰が運ばれて正常組織内に沈着することを石灰転移とよびます。カルシウムはヘマトキシリンに濃染し、硝酸銀を用いたコッサ染色では黒色に染まります

 結石 stone です。

 結石とは臓器内の管や腺の中で形成された石のような固形物で、代謝異常の結果生じたもののほかに、慢性炎症が加わった場合でもおこりやすいです。胆嚢、胆道ではピリルピン、コレステロール、カルシウム塩などがもとになります。日本では従来からのピリルピン石のほかに近年コレステロール石が増加しています。腎盂、尿管ではシュウ酸塩、リン酸塩、尿酸塩などによって作られます。そのできる場所により唾石、膵石、前立腺石、糞石などとよばれます。

 ウィルソン病 Wilson diseaseです。

 肝レンズ様変性症ともいわれる銅の代謝障害で、肝内での銅の移動にかかわる銅トランスポータークンパク質の異常によって発症する常染色体劣性遣伝病です。若年者に発症し、肝硬変、大脳基底核の変性、角膜周辺部への緑褐色の色素沈着(カイザー-フライシャー)を主徴とします。

脂質代謝の障害②

メタポリックシンドローム metabolic syndrome、内臓脂肪症候群です。

 内臟脂肪の蓄積が基礎にあり、それに高血圧、高血糖、高脂血症のうちの2つ以上が重なる状態をメタポリックシンドロームとする、という診断基準が日本内科学会を含めた複数の学会で策定されました(2005年)。内臓脂肪とは主に門脈系の腸間膜や大網に沈着した脂肪と考えられていますが、非門脈系の腎周囲脂肪をこれに含める考え方もあります。

 いずれにせよメタポリックンンドロームの状態にある人では結果的に心筋梗塞、脳梗塞などのリスクが高まることが指摘されるため、これを予見して対策を立てる目的で提唱された概念です。

 内臓脂肪はCTスキャンで検素する(臍部水平断面画像で100cm2以上) ほか、腹部超音波による画像で測定される(腎周囲脂肪厚10mm以上) こともありますが、簡便的にウ工スト周囲径(W)を測定し男性では85cm以上、女性では90cm以上が目安とされます。ただし女性では皮下指肪量の影響で、必ずしも正確な内臓脂肪量を反映しないこともあります。これに加えて血清トリグリセリド値が150mg/dL以上もしくはHDLコレステロールが40mg/dL未満、血圧130/85mmHg 以上、空腹時血糖が110mg/dL以上のうち2項目以上が重なる場合にメタボリックシンドロームと診断されます。

 糖尿病の観点からは脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンが内臓脂肪蓄積で減少し、インスリン抵抗性が増し、動脈硬化が促進されると説明されています。

 対策としては、生活習慣の改善、血糖、血圧、血清脂質コントロールが重要で、特に食後血糖が200mg/dL以上の場合は心筋梗塞のリスクが高いことを念頭におき、血圧130/85mmHg以上を高血圧と考えて対策を立てることが推奨されています。

脂肪肝 fatty liverです。

 避離脂肪酸は肝で代謝され酸化によりアセトンとなり、あるいはエステル化によりコレステロールエステルやトリグリセリドそしてリポタンパク質となり血中にでます。しかし遊離脂肪酸の過剰な肝への移入やトリグリセリドの増加、リポタンパク質の分泌障害などによって肝細胞内に脂肪が蓄積した状態を脂肪肝といいます。原因としてはアルコールや低酸素による肝細胞傷害や肥満、糖尿病あるいは飢餓や低タンバク質食でもおこります。肝細胞傷害性では一般に肝小葉中心性に、高脂肪食や飢餓では小葉周辺の肝細胞に脂肪化をみます。

脂質沈着症 lipid storage diseaseです。

 脂質の分解に関与するリソソームの酵素が欠損しているためにおこる先天性代謝障害(リソソーム病)で、肝臓、脾臓などのいわゆる網内系細胞に類脂質が異常に沈着します。多量のケラシン沈着と著しい脾腫をきたすゴーシェ病や、スフィンゴミエリン沈着と脾臓、肝臓、リンパ腫をきたすニーマン-ピピックなどがあり、いずれも常染色体劣性遺伝と考えられています。

脂質代謝の障害①

脂質代謝の障害についてです。

脂質異常症 dyslipidemiaです。

 血液中の脂質はアポタンパク質と結合したリポタンパク質(コレステロール、トリグリセリド(中性脂肪の主成分)、リン脂質を々の割合で含む)、および遊離脂肪酸の形で存在しています。これら脂質が異常値を示す状態が脂質異常症で、高コレステロール血症(血清総コレステロール≧220 mg/dL)や高トリグリセリド血症(血清トリグリセリド≧150mg/dL)などの高血症(高リポタンパク質血症)、および先天性リポタンパク質形成障害や慢性栄養不良、肝障害、内分泌異常(粘液水腫)、消粍性疾患などに由来する続発性の低脂血症があります。リポタンパク質は5つ(キロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDL) に分類されます。高脂血症はHDL以外のリポタンパク質の増加が原因となり、遣伝子異常に由来する家族性高リポタンパク質血症(Ⅰ—Ⅴ型)と肥満や糖尿病、甲状腺機能低下など内分泌疾患に続発する二次性に分類されます。血中脂質の増加は動脈硬化症の成因として重要です。一方、HHDはいわゆる「良いコレステロール」といわれ、低値が心疾患のリスクを増大させ、間題となります。

肥満症 obesityです。

 肥満は脂肪組織の過剩な蓄積で、肥満に起因する健康障害を合併するか、または医学的に減量を必要とする病態を肥満症といいます。肥満症には摂取カロリー過多が間題となる単純性肥満と遺伝性や視床下部性、前頭葉性、内分泌性など症候性肥満症があります。肥満の判定では体格指数BMI( = [体重(kg)] / [身長(m)]2)が用いられます。わが国では標準体重= [身長(m) ]2×22で、25≦BMIく30を肥満一度と判定します(身長160vmで体重64kgのBMIが25)。WHO基準の0beseⅠである30≦BMIく35は日本肥満学会基準では肥満2度ですが、わが国では男女ともに約20%が肥満一度に分布し、肥満2度以上は3%に満たないです。しかし、1度の肥満群の大半が内指肪肥満の可能性が高く、耐糖能異常、2型糖尿病、高血圧症、高脂血症などの合併率が標準体群に比べて約2倍に上昇します。

核酸代謝の障害

核酸代謝の障害についてです。

痛風 goutです。
 
 核酸の成分であるプリンの代謝障害によって、その最終産物である尿酸の血中濃度が増し多量の尿酸塩が沈着するもので、多くは手足の関節周囲組織に針状血症をもつ有痛性の結節としてみられます。また尿酸血症沈着による腎障害や尿路結石もあります。高尿酸血症(血清尿酸値7.0mg/dL以上)の原因としては糖尿病など基礎疾患のあるものや先天性プリン代謝障害などのほかに、食生活、特に高動物性タンパク質食も誘因の一つと考えられていますが、高尿酸血症は2~3%にしか病風は発症せず、その捉序はまだ不明です。なお工ストロゲンの尿酸排泄促進作用のために、女性での発症は男性の10分の1程度です。尿酸は水溶性で、尿酸結晶の証明には純アルコールなど水を含まない固定液を用います。

核酸代謝素欠損症です。

 核酸代謝に必要な酵素は多数あり、それぞれの欠損症が知られていますが、代表的なものとしてはアデノシンデアミナーゼ (ADA)、ヒポキサンチン一グアニンホスホリポシルトランスフェラーゼ(HGPRT)、プリンスクレオシドホスホリラーゼ(PNP)などがあります。このうちHGPRTの部分欠損は痛風の原因として知られています。ADA欠損症ではデオキシアデノシンの蓄積がT細胞の分化・増殖を阻害し、リンパ球の減少や低ガンマグロプリン血症を招き重症複合免疫不全症 severe combined immunodeficiency (SCID) を発症します。ADA欠損症は遺伝子治療の対象疾患となっています。

タンパク質代謝の障害

タンバク質代謝の障害についてです。

低タンパク血症 hypoproteinemiaです。

 血清タンパク質 (基準値6.3~7.8g/dL)、ことにアルプミンが減少する疾患で、後天的欠乏として飢餓、消化器系悪性腫瘍などでタンパク質素材の供給が欠乏した場合、ネフローゼなど高度のタンパク尿で喪失が著しい場合、さらに肝障害のためにタンパク質合成能が低下した場合などにおこります。また先天的欠乏としては先天性無アルプミン血症(常染色体劣性遺伝)などがあります。血清蛋白質量が5.0g/dL以下、アルブミン量で2.3g/dL以下になると血漿の膠質浸透圧の低下のため浮腫や腔水症などがおこりやすくなります。

アミロイドーシス amyloidosisです。

 アミロイドには由来する細線維タンパク質により、免疫グロブリンのL鎖由来の免疫アミロイド(AL)、関節リウマチなど慢性炎症での血清アミロイドタンパク質に由来するAAアミロイド、プレアルブミン(トランサイレチン) に由来するATTRアミロイド、内分泌線に関連するAPUDアミロイド、さらにアルツハイマー病にみるβ前駆体タンパク質からなるβ前駆体アミロイドなどがあり、単一なものではありません。これらのアミロイドが沈着したものをアミロイドーシスといい、身性と局所性に大別されます。全身性アミロイドーシスでは肝臓、脾臓、心臓などの多くの臟器にアミロイド沈着がみられ、腫大、硬化、ろう様光沢をしめすようになります。これには結核、関節リウマチなどの基礎疾患を有する反応性のアミロイド(AA)や多発性骨髄腫などによる免疫性アミロイド(AL)、遺伝性の家族性アミロイドポリニューロパチーでのアミロイドい(ATTR)があります。局所性アミロイドーシスは脳(Aβ)や甲状腺(AUPD)など1つの臟器に限局してみられます。アミロイドにコンゴ赤試験で淡橙赤色、ヨード反応で赤掲色に染まりますがALタンパク質ではコンゴ赤試験の染色性は一様ではなく、また症例ごとに抗原性も異なります。コンゴ赤染色標本のアミロイドは偏光顕微鏡で録色の複屈折性をしめし、またチオフラビンで黄緑色蛍光を発し、メタクロマジー反応は陽性をしめします。電子顕微鏡では幅約10nmのアミロイド細線維がみとめられます。

尿毒症 uremiaです。

 慢性的な腎機能不全がおこるとタンパク質の最終分解産物である尿素やクレアチニンなどの排泄が障害され、これら窒素化合物が血中に蓄積し中毒症状がおこります。中枢神経系の障害により意識障害がおこり、また肺、線維素性炎をおこします。

高アンモニア血症hyperammonemiaです。

 消化・吸収されたタンパク質の異化に伴う代謝経路で生じたアンモニアは肝臟で尿素に代謝され排泄されます。しかし、肝硬変などの肝機能不全状態で血中アンモニア濃度が上昇、高アンモニア血症となり、ときに脳に障害をきたし肝性昏睡を招きます。

アミノ酸代謝障害です。

 その多くは常染色体劣性遺伝形式をとります。最もよく知られているフェニルケトン尿症では、フェニルアラニン水酸化素が先天的に欠乏するためにフェニルアラニンが体内に蓄積し、これがフェニルケトンとなって尿中に多量に排泄されます。未治療では脳に蓄積されたフェニルアラニンによって知能障害をひきおこし、またチロシンへの代謝障害のためメラニン色素形成が阻害され、色素欠乏症状も出現します。

糖質代謝の障害

糖質代謝の障害についてです。

糖尿病 diabetes mellitus (高血糖症 hyperglycemia)です。

 インスリンはのランゲルハンス島(膵島)のB細胞(β細胞)から分泌され、血糖を低下させる唯一のホルモンです。このインスリンの作用不全が尿病をひきおこします。糖尿病では高血糖、尿糖が続き多尿、ロ渇、多飲をしめし、心臓、脈管系、腎、肝などがおかされ.、神経系にも病変がおよびます。糖質のほか脂質やタンパク質の代謝も害され、代謝性アシドーシスがおこり、尿にはケトン体も出現し、ひどくなると糖尿性昏睡に陥ます。糖尿病の合併症として代表的な病態としては、この昏睡以外に、微小血管障害(糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、末梢神経障害)や動脈粥状硬化症、さらに肺炎、尿路感染症、結核など感染症に罹患しやすいです(易感染性)。
 
 糖尿病は単一の疾患ではなく、多くは遺伝的背景を有し、種々の環境因子によって発症します。近年、日本糖尿病学会において分類の見直しが行われました。

 1型糖尿病はインスリン依存性糖尿病(IDDM)と呼ばれてきたもので、急激に発症することが多く、HLA-DRとの相関があり、抗膵島細胞抗体の出現などから、ウイルス感染などに伴う自己免疫的機序によるB細胞の破壊が推定されています。圧倒的に若年発症例が多いですが(若年型)、まれに中年以降の発症もあります。肥満や生活習慣とは直接関係しません。治療はインスリンの継続投与を必須とします。原因不明の突発性のものも含まれます。

 2型糖尿病は日本人の全糖尿病想者の9割以上を占め、成人発症例が多く(成人型)、インスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) にほぼ相当します。家族歴が関与する割合は1型よりも高く、80%に肥満があり、生活習慣が加わって発症し、高指血症の合併も多いです。発症は緩徐で、食事療法、運動療法が治療の中心となりますが、ときにインスリンを必要とする場合もあります。

 そのほかにインスリン受容体、グルコキナーゼなどの遣伝子異常が同定されたものや、 慢性膵炎、内分泌性、医原性、妊娠に伴うものなど続発性(二次性)の糖尿病があります。一方、インスリン治療中の患者は急激な低血糖症 hypoglycemiaの発作がおこることもあります。低血糖発作はインスリノーマ insulinomaなどでもおこります。

 糖原病glycogen storage diseaseです。

 通常体内へ入った糖は消化分解され、血中でブドウ糖として運搬されますが、その貯蔵の主体を成す器官である肝や筋細胞には再びブドウ糖として合成され血中に放出されます。この合成や分解はすべて酵素の働きで行われますが、これらの酵素が先天的に欠損する(先天性代謝障害)とグリコーゲンが肝臓、筋肉、腎臓、心臟などに異常に蓄積するようになります。欠損酵素の種類や酵素内の欠損位によって現在10型に分けられています。代表的な疾患としては肝や腎のグリコーゲンの蓄積による腫大や血糖の低下をしめすフォン・ギールケ病や、心筋にグリコーゲンが蓄積して先天性に心肥大をきたし、治療しないと乳児期に死亡するポンペ病(リソソームの一つ)があります。

ガラクトース血症galactosemiaです。

 ガラクトースからグルコース(ブドウ糖)へ変換される過程での酵素欠損によりガラクトースおよびガラクトース1ーリン酸が組織中に蓄積する先天性の常染色体劣性遣伝病です。3種類が知られていますが、そのうちガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ欠損症(GALT欠損症)は古典的ガラクトース血症ともいわれ、新生児早期より重症の肝障害、血液障害、感染症をきたし、ミルクをそのまま飲ませ続けると致命的となります。また、白内障に加えて乳幼児期以降には知的障害も現れます。したがって、早期に発見し乳糖除去ミルクを与えることが大切です。

糖尿病について以下に示します。

物質代謝障害

物質代謝障害についてです。

 生体が一定の物質的構成を維持しつづけるためには、外界と絶えず物質の交換が必要です。そのため、生体は必要な物質を外から取り入れて自己に適した物質に変換して利用し、不必要にな たものを排泄します。この一連の物質交換を行うための化学変化を物質代謝 (代謝) といいます。さまざまな物質のうち糖質は消化酵素 (アミラーゼ) でブドウ糖に代謝、小腸で吸収され門脈から肝臟を経由して血糖として血液中に存在します。また、余分なブドウ糖はグリコーゲン (糖原) として肝や筋肉に蓄積されます。ブドウ糖は酸素と同様に神経細胞を始め全身の細胞のエネルギー源として使用されるため、血液中に一定の濃度が維持される必要性があります。血糖は主にインスリン、グルカゴン、アドレナリンなどのホルモンによってその濃度(空腹時基準値70~110mg/dL程度)が調節されます。タンパク質はアミノ酸、オリゴペプチドとして吸収されたのち、組織に必要なタンパク質として再合成され、最終的に尿素となって尿中に排泄されます。血液中ではその多くはアルブミンとして存在し、血漿の膠質浸透圧のコントロールや種々の物質と結合しその運搬の役割を果たしています。脂質には中性脂肪、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸などがあり、エネルギー源のほか臓器組織の構成、ステロイド系ホルモンの原料になるなど多方面に広く利用されています。これらの代謝過程に障害が生じるとそれぞれに応じた疾患を発症します。

消化酵素などについて以下に示します。

早老症と脳死

早老症 premature senilitypr or ogeriaです。

年齢よりも早く老化が進行する早老症の代表的疾想として常染色体劣性遺伝病であるウェルナー症候群があります。その原因は第8染色体短腕にあるWRN遺伝子(WRN)の異常で、WRNはDNAヘリカーゼ(DNA複製時にDNAの2重らせん構造を解く酵素)としての構造を有しており、その異常はDNAの複製を抑制し、老化を促進させると考えられます。15~30歳で好発し、低身長・低体重・白髪・脱毛、白内障、皮膚硬化、動脈硬化症、骨齟段症などを合併し、大多数が50歳までに死亡します。世界で1200例余の報告例のうち8割近くが日本人ないし日系人で占めます。
 ハッチンソン-ギルフォード症候群(プロジェリア progeria)は乳幼児期から脱毛、強皮症様変化、低身長(110cm以下)、低体重(15kg以下)、骨低形成、脂肪萎縮。島様顔貌などがみられ、小児期より動脈硬化が出現し、大多数が20歳までに死亡します。近年ラミンA(LMNA)遣伝子に異常を来たしていることがわかり、その結果、核膜の異常が老化を促進すると考えられています。散発的な発症が多く、まれな疾患のため遣伝形式も定まった見解はありません。
 このほか、常染色体劣性遺伝病でDNA修復障害から高紫外線感受性を示し、小児期に死亡するコケイン症候群や、常染色体優性道伝病の筋緊張性ジストロフィー、そして染色体異常であるダウン症候群なども広義の早老症に含まれています。

老化による生体の変化です。

 老化した個体では全身の含有水分やタンパク質の減少また脂質の増加が特徴とされますが、種々の臓器において加齢に伴う変化が観察されます。各主要臟器における加齢性変化と関連性の高い疾患について以下の図に示します。

 脳死と死です。

 個体の不可逆的な機能停止を代表して、古くから心肺機能の停止が死を意味していました。
 一般に死亡診断には死の三徴候(自発呼吸の停止、心拍の停止、瞳孔散大と対光反射の消失)が必要で、とくに心拍の停止が重規され、心臟死とよばれます。しかし、医療の進歩に伴い、一時的な心肺の停止は必ずしも死を意味するものではなくなり、現在の臨床では治療の目的を達するために、心臟や肺の機能を代用する人工心肺装置の利用も一般的な治療の方法として行われるようになってきました。一方、これら心肺の機能を制御する脳、とくに脳幹部植物中枢の不可逆的傷害は心肺を含むほかの臟器に異常がなくとも心肺の機能を停止させます。たとえー時的にレスピレーターで強制的に肺機能を維持し、心拍を維持できたとしても、レスピレーターをはずせばまもなく心拍は停止します。このように自発呼吸をはじめとする脳幹機能および高次脳機能を失った状態を脳死 brain deathといい、脳幹部だけ生き残り自発呼吸の可能な植物状態 vegitative deathとは区別されます。脳死判定基準は1985年に提議され、その後一部に修正が加えられました。(下図)
 脳死判定の時点では脳の形態はまだ保たれています。脳死と判定されたのちはレスピレーターで管理されても数日から2週間後くらいには心肺が停止し、そのときとりだされた脳はドロドロの融解壊死状態となっています。これをレスピレーターとよびます。