コバルト遠隔治療装置②

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コバルト遠隔治療装置の外観および構造についてです。

 コバルト遠隔治療装置は、その照射ヘッド(放射線へッド radiation head)はアイソセンタisocenter (または回転中心という)を中心として360°全回転が可能であり、回転照射、運動照射が可能であるアイソセンタ方式の全回転型装置が主です。その回転速度は 0.1~1.0rpm (rotation per minute)の範囲で調整できます。照射ヘッドはそれ自身も左右に首振り可能です。また、以前は前後に照射ヘッドが首振りする装置も使用されたこともあったのですが、装置の大型化に伴い前後首振り運動ができない装置がほとんどでした。 外部放射線治療装置には、重い照射ヘッド (約4 ton前後) を支え、可動させる頑丈な架台gantry(ガントリ)が必要となります。 一般に照射ヘッドの支持体の他端には、回転バランスと放射線遮蔽用の対向板beam stopperを備えています。この対向板は主ビームの照射室外への漏洩を減少させ、照射室壁厚を減ずるために装備されています。その遮蔽能力は 1/1000 程度です。 コバルト遠隔治療製置の線源回転軸間距離sorce-axis distance SAD(線源前面中心点とアイソセンタ点との距離, 線源回転中心間距離source-center distance SCD ともいう)は60 ~80cmの装置が多く使用されました。

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 放射線治療装置の治療寝台treatment bedは天板、天板支持機構、駆動機構、べースなどで構成され、アイソセンタ回転および天板支持部の支柱回転ができる単脚支持形のものが一般的に用いられています。その天板は平板方式が多いですが、以前には弯曲した船底型のべッドも使用されていました。治療寝台のビームが通過する部位は、べッドからの散乱線による皮膚障害を避けるためにマイラーあるいは網状になっています。その治療寝台は患者が簡単に寝られるように床上近くまで下がるものが多いです。
 コバルト遠隔治療装置の主制御盤main control panelは照射室に隣り合った操作室にあり、電源スイッチ、線源ON-OFFの表示、照射時間を設定するタイマtiming device、回転速度の制御部等からなっており、リニアック治療装置等の加速器の制御器とくらべると比較的簡単な機構となっています。手持操作器は照射室内に設置され、患者に対する位置決め設定を患者の近傍で行います。

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コバルト遠隔治療装置①

コバルト遠隔治療装置の概要についてです。

 コバルト遠隔治療装置は、現在の高エネルギー外部放射線治療の基本となった装置であり、そのシステム、機能は現在の主力放射線治療装であるリニアック治療装置に引き継がれています。コバルト遠隔治療装置は既にその生産が中止されていますが、ここでは高エネルギー外部放射線治療装置としての基本的機能を理解するためにコバルト遠隔治療装置について説明します。

 コバルト遠隔治療装置は、放射性同位元素RI線源を使用したRI治療装置 RI であり、回転形の外部照射装置です。放射線 (60Co γ線) の照射は線源シャッタの開閉で行い、通常は固定または運動(回転) 照射を行います。コバルト遠隔治療装置は、 加速装置であるリニアック治療装置、マイクロトロン治療装置とくらべると、60Co線源を使用しているために放射線の発生させる機構もなく簡単であり、その出力も安定しています。しかし、その深部量百分率 が50 %になる半価深 HVD は、リニアック治療装置からのx線とくらべると浅く、主に頭頸部の腫瘍の治療に最適であり、より深部の体幹部腫瘍の治療には少しエネルギーが低いといえます。その半影はリニアック等の医療用加速装置のそれとくらべると大きい欠点があります。

 コバルト遠隔治療装置は、60Co線源の半減期が約5.2年であり、その治療時間(照射時間)は線源減衰とともに長くなることにより、その線源を交換(ほぼ3~5年毎が理想)しなければなりません。しかし、そのRI線源供給の経費、運送時の安全性等の種々の要因により、コバルト遠隔治療装置の線源は供給停止の方向にあり、コバルト遠隔治療装置は、リニアック治療装置の急速な普及に伴い、順次約4 MV前後のX線が使用できるリニアック治療装置に置き換えられ、その生産は中止されています。しかし、長年の経験から改良されたコバルト遠隔治療装置は現在の高エネルギー放射線治療装置の基本となっています。

外部照射装置の概論③

 現在, 先端放射線治療システムである定位放射線照射stereotactic irradiation system STI、強度変調放射線治療intensity modelated radiation therapy IMRT、画像誘導放射線治療imag-guided radiation therapy IGRT、 四次元放射線治療four dimension radiation therapy 4D-RT、および粒子線治療particles therapy等の高精度放射線治療システムの導入が急速に進んでいます。定位放射線照射システムには, 定位放射線照射装置である高精度リニアック治療装置、ガンマナイフ(治療装置)、および専用の患者固定用具、治療計画装置が使用されています。IMRTシステム、IGRTシステム、4D-RTシステムには、先端技術を導入した高精度リニアック治療装置が使用されています。 一方、粒子線治療では、より大型の粒子線加速器であるサイクロトロン、シンクロトロンを用いた高エネルギーの陽子線治療proton therapy、重粒子線治療heavy particle therapyが行われています。それらの発生装置は医療に簡単に使用できるほど小型でなく、一般医療施設 (病院) に設置できる治療システムにはなっていません。しかし、加速器技術の開発速度は速く、陽子線治療および重粒子線治療が癌の治療に威力を発揮するのもそんなに遠くないと期待されています。実際、日本国内数か所の施設で陽子線治療、重粒子線治療が行われています。また、原子炉から放出される熱中性子線による治療も試みられています。

 一般にあらゆる放射線が利用できるほど多種類の外部放射線治療装置を設置している治療施設は少なく、各施設では使用可能な外部照射装置からの放射線を選択工夫して放射線治療に使用しているのが現状です。

外部照射装置の概論②

現在、高エネルギーX線、電子線の放射線治療装置として、粒子線形加連器の一種類である電子線型加連器(医療用直線加速器、リニアアクセラレータを略してリニアックlinac治療製置, あるいはライナック治療製置ともいいます)。および電子円形加速器であるマイクロトロン治療装置が使用されています。 一般に、粒子加速器(略して加速器、accelerator という) とは、真空中で電子等のイオン (荷電粒子) を光速、 高エネルギーにするものと定義できます。 この定義からはX線管球、直空管等も含まれますが、一般には、イオンを数MeVのエネルギーに加速でき、原子核、素粒子と関係するものを加速器と呼んでいます。医療用のリニアック治療装置およびマイクロトロン治療装置では、加速ビームである電子線と同様に、その電子線をターゲットに当てることにより発生するX線が主に治療ピームとして使われています。なお、電子円形加連器であるべータトロン治療装置も使用されていましたが、そのビーム利用効率が悪く、その後のリニアック治療装置の開発、改良により現在は生産が中止されています。現在、マイクロトロン治療装置も最新医療装置に改良されたリニアック治療製置に置き換わっています。また最近まで皮膚癌あるいはケロイド等の表在皮膚疾患の外部照射に使用されていた約50 ~ 100kV程度のX線の表在放射線治療装置も、それらの治療はリニアック治療装置からの電子線装置に置さ換わり、その生産が中止されています。

 コパルト遠隔治療装置からのγ線による治療により始まった高エネルギー放射線治療は、現在、リニアック治療装置からの高エネルギーX線および電子線が主に使用されています。たとえば、約4cm深さまでの浅在性腫瘍に約4 ~ 12MeVの電子線を、約2 ~ 10cm深さの頭頚部腫瘍等に4~6MeVのX線を、さらに体幹部の深部腫瘍には6~20MVのX線等が多く使用されています。

外部照射装置の概論①

 現在行われている放射線治療の約8割が外部放射線治療であり、残りの約2割が小線源治療です。放射線治療に使用されている外部照射装置、その付属機器、小線源治療機器,放射線治療計画機器について説明していきます。

 外部照射装置の概論についてです。

 各種放射線を体外から経皮的に照射する外部放射線治療法を外部照射といいます。外部照射装置(あるいは外部放射線治療装置)には、固定形と回転形があり、現在ではほとんどが回転形です。すなわち、放射線治療患者には重症患者も含まれ、それらの患者は限られた治療安定体位しか取れないことを考慮すると、あらゆる方向から放射線を照射できることが放射線治療では重要となります。一般に現在の外部放射線治療装置は全回転型装置であることが必需となっています。外部照射では、線源患者皮膚面間の距離を約0.6~ 1mに設定し、治療装置の照射ヘッド、ガントリを固定または運動(回転)させて放射線を照射します。患者位置きめ後の照射は、術者の被曝を避けるために、別室から遠隔操作で行う機構になっています。すなわち、すべての外部放射線治療装置は放射線が室外に漏洩しない独立した照射室内に設置された遠隔装置です。

1952年、カナダで60Co大線源を用いたコバルト遠隔治療装置が開発されました。コバルト遠隔治療装置の開発により,それまで放射線治療に主に使用されてきた約200kVの深部X線治療装置に代わり、現在の高エネルギー放射線治療(以前には,超高圧放射線治療と呼ばれたときもある)が開始されたといえます。高エネルギー放射線治療になり、放射線治療成績は約20%以上も上昇したといわれています。その主な理由は,それまで使用されていた約200kVのX線よりも透過力の大きい高エネルギーγ線(60Co, 1.17および1.33MeV γ線)を使用したために、より深部の治療が可能になったことおよびビルドアップ効果による皮膚線量が低下したことが指摘できます。なお以前には、137Cs大線源(137Cs, 0.662 Mev γ線)を使川したセシウム遠隔治療装置も製品化されましたが、137Cs 線源の比放射能は小さく、線源形状が大きく、半影も大きく、低出力であるために、はとんど普及しませんでした。
 

predictive assay

predictive assayについてです。

 放射線治療において、同じ組織型であっても、腫瘍の性質は個々の腫瘍によって大きく異なり、また正常組織反応も個人差が大きくなっています。現在、放射線生物学的手段として、放射線治療を開始する前に腫瘍や正常組織の放射線感受性を個別に予知し、その治療を行った場合の予後や合併症を予測するpredictive assay(予測試験)が検討されています。将来、放射線治療前に患者ごとにpredictive assayの結果に基づいて最適の治療法を施行できることが理想です。現在、種々のpredictive assayの可能性についての研究が始まっています。

 生検または手術によって得た腫瘍片から腫瘍細胞を分離してin vitroで照射し、コロニー形成法や細胞密度の測定により細胞生存率を求める方法が検討されています。これらのうち、2Gy照射後の細胞生存率であるSF2を用いた通常分割照射の1回線量で生き残る細胞の割合を推定する方法であるSF 2 assayが研究されています。しかし現状では、SF 2は放射線治療後の予後囚子として完全には確立されておらず、さらなる検討が必要です。また SF 2 assayでは、線維芽細胞も腫瘍細胞と同様にコロニーを形成し、腫瘍片から腫瘍細胞と正常細胞の分離方法も解決しなければなりません。

 微小核形成試験micronucleus assayが腫瘍細胞の放射線感受性を予測する方法として検討されています。放射線照射後の細胞分裂時に染色体の一部が娘核に封入されずにこぼれ出たものを微小核といい、微小核形成試験は微小核の発生頻度によりその細胞の放射線感受性を推定する方法です。現時点では、微小核の発生頻度の高い腫瘍は、放射線治療に対する反応性がよい傾向もありますが、発生頻度が低くても放射線に応しないとは限らない症例も報告されており、さらなる検討が必要です。 

 さらに, p 53遺伝子発現状況と放射線感受性との関係、放射線治療前および治療後のアポトーシスの発生、徴小電極を挿入して腫瘍中の低酸素状態を直接測定する方法等の研究が細胞の放射線感受性のpredictive assay法として発展すること期待されています。

ベルゴニ ー・トリボンドの法則

 一般に、組織の増殖動態、細胞分裂頻度によりその放射線感受性が異なります。組織の放射線感受性については、一般に以下に示すようにベルゴニ ・トリポンドの法則、1906年として知られています。

①細胞分裂頻度高いものほど、組織の放射線感受性が高い。
②将来、分裂回数の大さいものほど、組織の放射線感受性が高い。
③形態および機能において未分化のものほど、組織の放射線感受性が高い。

 すなわち、各組織の照射後の生存細胞数はその放射線感受性と分割期間中の増殖率等できまるといえます。さらに、正常および腫瘍組織の放射線生物学的効果は、細胞、組織の生死、障害の種類、生体の種類、さらにこれらが同じでも照射される放射線の線量域、線量率、線質、分割(線量一時間間隔)等の種々の条件によって異なります。
表に各種正常組織の細胞分裂頻度の違いによる放射線感受性の違いを示します。一般に細胞分裂頻度の高い増殖性細胞、すなわち細胞周期が短い細胞、組織ほど放射線感受性が高いです。細胞分裂頻度の高いリンバ組織、造血組織(骨髄)の放射線感受性は高く、一方細胞分裂をしない神経組織や筋肉の射線感受性は低いです。
  
 放射線治療では, 正常組織, 臟器の放射線障害を起こさずに腫瘍のみを制御することが理想であり、放射線高感受性の組織への不用な照射を避けなければなりません。しかし、現在の照射技術では、まったく正常組織、臓器に照射しないで腫瘍を治癒するのは不可能である場合も生じます。一般に正常組織、臓器ではしさい値以下の線量では障害は発生せず、放射線治療では各正常組織、臟器へは障害発生の耐用線量以下にすべきです。図に各組織、臟器の耐容線量を示します。正常組織、臓器の耐容線量はその照射面積、照射期間、照射分割回数等の照射件に依存します。放射線治療では、放射線感受性の高い正常組織、臓器への照射をなるべく避けるべきであり、特に、皮膚表皮、水晶体、骨髄、腎臓、腸管、および精原細胞への余分な照射には注意が必要です。放射線治療における放射線皮膚炎は、照射後約3~4週間後から反応が現れ、その程度は使用する線質により異なり、手術創のある部位の反応は強いです。また、唾液腺障害、放射線ロ内炎、白血球減少等にも注意が必要です。しかし、耐容線量内であればロ内炎、皮膚炎、白血球減少、脱毛等の一次的な有害事象は、放射線照射後に自然回復します。これらの有害事象は抗癌剤を併用、照射部位に手術の既往歴があることにより増幅されることがあり注意が必要です。

 各種腫瘍組織の放射線感受性を図に示します。 一般に、高度に分化した細胞ほど放射線損傷からの回復力も大きいと考えられています。しかし、この放射線感受性の違いの原因についてはいまだ不明なが多いです。

放射線感受性を決める4因子

放射線感受性をきめる4因子についてです。

組織の放射線生物学的な反応には,細胞死に起因する細胞欠損のみならず,次の4因子(4Rという)が考えられています。

①細胞の損傷からの修復repair,あるいは回復recovery
②細胞分裂周期の再分布「edistribution,あるいは同調reassortment
③放射線照射後の細胞再増殖repopulation,あるいは再生regeneration
④圓瘍内の低酸素細胞の再酸素化reoxygenation

 放射線感受性としての細胞の修復(回復)および再分布(同調)については前記事で説明しました。細胞が多く集まった組織では,放射線照射後に休止期G0またはそれに近い状態で停止していた細胞が再増殖(再生)することにより、それらの細胞から構成されている組織の修復(回復)が起こります。一方、放射線治療では、同調を含む細胞周期の再分布が組織の放射線感受性にどの程度寄与しているかについては不明です。

 ヒト粘膜や皮膚,腫瘍組織では、2~ 4週前後で再増殖が起きていると考えられており、その再増殖の速さは照射前に比べ加速しています。なお、ヒト頭頸部扁平上皮癌などの再増殖の程度(増殖分の細胞を相段するに必要な線量)は60cGy/日に相当します。また、細宿分裂の遅い正常組織(肺、血管内皮など)では、細胞分裂遅延が数か月に達するものもあり、その間に細胞の損傷が修復するのを遅い修復といいます。しかし遅い修復の機構についてはいまだ明らかでないです。

 小線源を用い数日間連続で低線量率組織内照射をする場合には腫瘍の再増殖は一般に無視できますが、外部照射および小線源による高線量率照射のように分割照射する場合には、正常組織、腫瘍組織の修復、再増殖を考慮しなければなりません。 最近、外部照射では腫瘍再増殖率および正常組織の障害からの修復を考慮した超分割照射法、および加速分割照射法が検討されています。

 大きな腫瘍では, その中心部は腫瘍血管が到達せずに養分と同時に酸素の供給が少なく、細胞は死減してしまいます。同時に、腫瘍中心部には死滅した癌細胞のみでなく低栄養化、低酸素圧化した細胞も存在します。これら低酸素圧細胞は、いわゆる酸素効果が期待できず、放射線低感受性細胞であり、放射線治療効果を減少させる原因となっていると考えられています。放射線照射の結果、まわりの十分な酸素圧下の細胞が死滅すると、血管の発育に伴い、これら低酸素圧細胞の再酸素化が起こると考えられます。すなわち、放射線照射後の時間経過で腫瘍中に酸素飽和細胞が再び出現します。分割照射では、再酸素化により腫瘍全体を効率よく致死できると考えられています。

 これら4Rを考慮して、放射線治療では分割照射が行われるともいえます。なお、現在一般に行われている1日約2Gyを約30日で約60Gy照射する通常分割照射法(遅延分割照射法ともいう)は長年の経験によって採用されたものであり、放射線生物学的な裏付けによっているものではないです。分割照射によって、一般に組織のSLDR、細胞数の増加、RBEの上昇、OERの変化が起こりその結果、正常組織のSLDR、細胞再増殖、および低酸素腫瘍細胞の再酸素化に利点があると考えられています。結果として、腫瘍組織と正常組織の間の感受性の差、および放射線投与線量の差が生じたときに放射線治療が可能となります。

組織、臓器の放射線感受性

 組織、臓器の放村線感受性を左右する主な因子は放射線照射による細胞死に起因する細胞欠損です。放射線照射による細胞死には、主に増殖死、問期死、自爆死があります。このうち、放射線治療の線量域で重要な増第死は、分裂している細胞に起こり、組織のどの細胞に増翹死が起こるかは標的ヒット理論で明らかにされたように確率現象です。なお最近、自爆死が放射線治療にどのように寄与しているのか研究されつつあります。
 悪性腫瘍、正常組織、臟器のいずれの細胞でも、単体として存在する培養状態になるとその放射線感受性はほとんど変わらず、D0は約1~2Gyです。すなわち、細胞の放射線感受性の研究に多く採用されている培養状態では、正常細胞といえども、無限増殖能を取得した特殊な状態の細胞であるといえます。一方、多くの細胞が集まった組織内では、正常細胞は無限増殖しません。正常組織および瘍組織は血管、結合組織などの合体したものであり、その放射線感受性は生物学的に複雅な反応を示し、その放射線感受性にも大きな差を生じます。
 一般に放射線治療の線量域では、細胞が死ぬ確率は存在しますが、組織としてはその機能が必ずしも失われるとはいえません。正常組織、臓器の機能障害が発現する線量にはしきい線量が存在し、大線量および照射される体積が大きいほど機能障害が生じやすいです。すなわち、組織、臟器では単体として存在する培養状態の細胞と異なり、さらに細胞死を修飾する種々の要因や組織としての特殊性が存在するために組織の放射線感受性は非常に複雑です。

放射線低酸素細胞増感剤

放射線低酸素細胞増感剤についてです。

 放射線治療における放射線増感剤とは主に放射線抵抗性の腫瘍(癌)組織の放射線感受性を高めようとする薬剤です。現在、放射線治療における放射増感剤としては、ハロゲン化ビリミジン類と低酸素細胞増感剤の2種類の薬剤が有効であると考えられています。まず、ハロゲン化ピリミジンであるBUdRはDNAの構成物買であるチミジンと似ており、チミジンの代わりにDNAに取り込まれ、放射線照射によってBUdRを取り込んだDNA鎖は切れやすくなります。しかし、BUdRの投与方法が難しく現時点では有効な臨床成績を上げていません。一方、腫瘍細胞の成長は速く、一般に大きな腫瘍中心部ではその血管成長が追いつかずに、壊死あるいは酸素分圧の低い細胞になっています。すなわち、酸素は放射線増感剤の1つとも考えられ、腫瘍中心部に存在する低酸素の腫瘍細胞は酸素効果が働かずに結果として低感受性細胞となっています。この低酸素細胞の照射後生さ残ったものが再増殖の原因となると考えられています。現在、毛細血管の少ない腫瘍内部にも到達でき、酸素と同じような働きをする多くの低酸素細胞放射線増感剤、特に酸素と同様な電子親和性を示すニトロイミザドール系の化合物が開発され、臨床研究されていますが、いまだ有効な低酸素細胞放射線増感剤は開発されていません。その主な理由は、放射線防護剤と同じく、その細胞毒性の存在および目的部位の細胞に選択的に取り込まれる薬剤の開発が困難であるためであると考えられています。一方、いまだ通常の臨床に使用できる低酸素細胞増感剤が開発されていない理由として、2Gy程度の通常分割照射では低酸素細胞分画の放射線抵抗性に占める役割は小さく、むしろ照射後の再酸素化が大きく寄与しているのではとも考えられています。

 なお、ある薬剤を放射線と併用して放射線単独の効果を修飾するとき、その併用効果を表すのに防護効果の時はDRF (dose reduction factor)、増感効果の時はER (enhancement ratio)を使用します。DRFは

DRF = 併用して単独の場合と同じ効果を得るのに必要な線量/ある効果を得るのに必要な放射線単独の線量

と表されます。ERは分母と分子が逆転します。いずれの場合も、値が1より大きいときに効果があることを意味します。